【第一章完結】聖女の私が悪役令嬢で婚約破棄などありえないので復讐して差し上げます!

水仙麗

第一章 婚約破棄などありえません!

第1話 婚約破棄など納得できません

「今日でやっとラストシーンだ……!」


私は最近流行りのとある乙女ゲーにハマるそこらの高校生である。最初はこんなのくだらないと思っていたがやってみれば楽しくてなんだかんだで今日でラストシーンを迎えるところだ。今まで何度も魔が差したこともあったが、我慢して絶対にネタバレ動画なんてものには手を出さなかった。やっとそのラストが見れる。


「リース・ミリアスタル!お前との婚約を破棄する!」


は?こんなのありえない。だってリースは純粋無垢なヒロインで何より、この世界ではトップレベルの聖女様なのだ。そんな彼女が婚約破棄されるなんて本当にありえない。早く次のセリフがみたくて画面をタップする。


「お前みたいな悪女には反吐が出る!早く出ていってくれ!俺たちは本物の聖女様を見つけたのだ!」


だから本物の聖女様はリースしかいないのに何言うんだ。そして聖女もどきの服装をした少し背の高い女性が奥から現れる。


「私、ミラニィナ・メナニィと申します。本物の聖女ですわ。偽りのお方は消えてくださいな」


「何を言いますこと!本当の聖女は私ですわ!」


おかしくなりそうなこの空間でリースが反論する。リースが反論して声を荒らげた途端に出口付近にいた衛兵が大きな槍をカツンと鳴らし、彼女を牽制する。


「ともかく、嘘つきには出ていってもらおう」


リースが無理やりにも退場すると、ヒロインに成りすました悪役との結婚シーンを終えて、ゲームは幕を閉じた。こんな展開あんまりだし、わざわざ時間をかけてやってきたことに悔いる。クリアするまで封印していたネットを漁ると、どこもかしこもこのゲームに対しての批判で溢れていた。なんでリース様がそんな目に遭うんだ!とか、胸糞過ぎて期待外れとか、時々過激派も見かける。


「私がリースなら絶対こんなことでは終わらせず、あのアホ王子に復讐してやるのに…」


ぽつりと心の底から出てきた言葉はなんで自分が呆れたゲームにこんなに本気になっているのかと自分自身を疑ったが、そんなことより本当にこのゲームはこの展開で終わりなのか?続編なんてものも無しに終わらせる気か?さすがにそれはないだろう。でも、自分がこのゲームの続編を作れればどれだけ楽しいことか。


聖女としての力を使って、他の王子様にプロポーズされて、あのクソを見下すんだ。そんな妄想をふくらませて階段から降りようとしたところだった。リズミカルにいつも通りに降りているつもりだった。


足を踏み外せば奈落の底だった。


痛みに耐えて目を開ければ。


「リース・ミリアスタル!お前との婚約を破棄する!」


私は婚約破棄を言い渡された聖女様こと、リースになっていた。






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