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─私立翠涼学園高等学校
季節は春。長ったらしい入学式を終えた一年生達は教室で担任の教師が到着するのを待つ。
(はぁ。何で私のクラス、同じ中学の子いないのよ~)
長い黒髪を赤いリボンでポニーテールに纏めた少女はただ一人、落ち着かない様子で時が過ぎるのを待っていた。周りのクラスメイト達は同じ中学ないし小学生以来に再会する友達と談笑に花を咲かせているからだ。
「ねえ、大丈夫?」
三つ後ろの席からショートカットのボーイッシュな少女が話し掛ける。心配になる程の顔色をしていたのだろう。
「う、うん…大丈夫。ありがとう」
初対面の人間に話し掛けられたのもあってか、更に心臓がキュッっとなるのを彼女は感じた。その時だった。
「はーい、席に着きなー」
茶髪のセミロングヘアにジャージの上下という出で立ちの若い女が入室。生徒達が自席に座ると、彼女は出席名簿を教壇に置く。
「今日から君たちの担任になる、“加藤らら”だ。加藤は加トちゃんの加藤に、ららは平仮名だ。よろしくなー」
おおよそ教師とは思えない風体と口調の加藤に、生徒達は「よろしくお願いします」と声を揃えて返す。彼女は可愛らしい下の名前とは逆に、逆らってはいけないオーラを纏っているのだ。
「じゃあ、自己紹介いってみようか。まずは出席番号一番の……アカヒ、レイさん…?」
加藤が名簿に書かれた名を読み上げる。
「あ、“あかくら あや”です」
と、先ほどの赤いリボンにポニーテールの少女は呼ばれた名を訂正する。
「ああ、ごめんごめん!じゃあアカクラさん、どうぞ」
どうぞと言われても名は名乗ってしまった。他に何を言えば良いのだ…とは思いつつ、彼女は起立し自己紹介を始める。
「あ、はいっ!東中から進学しました、
と言って、礼は再び席に着く。ただでさえ緊張しているのにトップバッターである。声も上擦ってしまい恥ずかしい思いをしてしまった。礼は自らの名字と、『相川』や『青島』という姓のクラスメイトがいない事を少し呪った。
「“アカヒレ”……?」
礼を心配して話し掛けた少女は、呟く。そうこうする内に井上、植田という二人の男子生徒が自己紹介を終え、彼女の番が来た。
「三中出身、
唯は歯切れの良い挨拶をした後、礼の顔を見た。そして目が合うと、眩しいほどの笑顔を見せる。
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