異世界転移したので、サーカス団長としてのんびり旅しながら魔女の討伐目指します!!
天秤アリエス
第一章 転移したので、領主からサーカス団長になってみた話
魔女を怒らせ異世界に飛んだ!
第1話 異世界の美女=僕でした。
どこまでも、海。かと思えば、真ん中に孤島がある……らしい。
らしいと言ったのは、まさに俺たちがそこに現れたからだ。
……ちょっと待て? 文体が変だな。
「なにやってんのよ、セディス!」
てきぱきと喋る幼女がセディスを叱り口調で呼ぶ。
「どこまでも、海。かと思えば……」
「現実逃避! しないでくれる?」
目の前でツインテールが揺れた。その見覚えのある2つのリボンは、間違いなく自分が婚約者に(ご機嫌取りで)捧げたものである。
「いや、確か、僕の婚約者はもっと胸があり、背もそこそこ高く、高慢ちきな口元を持ち、つり上がった目をしていたはずだが」
「あんた、あたしを何だと思ってんの。そうよ、あたしよ。ラブラミント! あんたの素晴らしーい婚約者よ!」
告げると、ラブラミントは目を瞠って動かなくなった。
「セディス、よね」
「さっきから自己紹介してるだろうが! 僕だよ。カモミール家第50代当主で」
「財産を管理できないので、有能な執事によく叱られてる」
「ラブラミント、余計なことは言わんでいい」
ラブラミントはよろり、と立ち上がると、ぺったりと座り込んだセディスの手を取り、「こっちこっち」と海の見える方へと歩き出す。
ここは、どこなのだろうとセディスは見渡す限りの海と、自分の立っている孤島を交互に眺めた。少し視線が低い気がするが、これは夢なのだろうか。
「ラブラミント、ここはどこだ」
「自分の姿を見て」
ラブラミントは足を止めた。海の水面では、姿が見えないことに気がついて、また「こっちこっち」と手を引く。ラブラミント・ハーノヴァーといえば、お隣の国の由緒あるお嬢様で、英国はカモミール公爵家の婚約者には相応しいが、相応しいのは家柄だけだ。ラブラミントは性格がきつく、セディスはしばしば隠れたり、逃げたりの日々を繰り返していた。
「おい、どこまで行くんだ。孤島だろ」
「繋がっている気がしたから、セディス、水たまりを作るわ」
告げると、幼女はせっせと生えている枝を失敬し、小さな穴を掘った。今度は海水を汲んできて、それは地面すれすれに一杯になった。
「簡易鏡のできあがり! さ、セディス、どうぞ」
「なんでいちいち自分を見なきゃならないんだ」
「いいから!」
変な奴だな。
言わずに、セディスは水たまりに顔を映して、「ん?」と覗き込んだ。
「なんだ、この、僕好みの美女!」
水たまりには、嫋やかな胸を持ち、不思議そうにこちらに微笑む絶世の巨乳美女が映っている。隣には、ラブラミントに似たツインテールの幼女の姿。
「あんたよ。魔女の巨乳魔法陣が移ったと思われる。あんたが悪いのよ。魔女となんか火遊びするから! 見なさいよ、どこなのよ、ここは!」
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