V中BAR企画
「オーホホホ!!この私に勝てると思わない事ですわ~~~!!」
俺はチャールスに連れられ、V中BARの参考に、まずソデザベス女王の仕事ぶりを見ることにした。
前に謁見した時は、ちょっとおばさん入っていたはずだが、今の女王は10代後半くらいまで若返っている。
若返ったソデザベスは、ひらひらのドレスを着てラメリカ製のテレビゲームを遊んでいる。
そのゲームは、ビンに下半身がまるまる入ったプレイヤーが、メチャクチャ不自由な操作感覚でもって、ゾンビのいる山を登っていくというゲームだ。
高難易度すぎてクソゲー扱いされているゲームらしいが、不思議なことにクソゲーというものはギャラリーがいると盛り上がる。
こういった理不尽な高難易度ゲームは会場に一体感が生まれるものだ。
……とくに、成功しそうな所で、失敗した時に。
「ギョェエエエエー!!!なんですのこれえぇぇぇぇ?!」
余裕たっぷりでハンドガンを乱射していたソデザベスのキャラクターは、さっそく大量のゾンビに囲まれ、頭からガブガブされていた。
「おやめなすって!!死に晒せぇ!!!!!」
「「ソデザベス様ー!!」」
「勝ちを確信してから落とされる、女王のリアクションは最高だぜ!」
「だな!!あの勝ち誇った顔からの泣き顔!!」
高慢な態度からぶちのめされて悲鳴を上げるソデザベスに、無数のおひねりが飛んでくる。なるほど、インターネットがないから、リアル版のVtuberってかんじだが
これはこれで良いんじゃないか?
BARがそこまで大きくないから、毎回全員が入れるわけでは無い。
見逃し分は撮影してビデオとして売っているそうだ。
チャールスやるじゃん。インターネットがないこの時代にも関わらず、ちゃんとユーザーの需要を理解して、メディア販売してるとか、やっぱ頭おかしいなコイツ。
「……あまり期待はしていなかったが、チャールスのやっていることは本物のエンターティメントだな。なかなか面白いことを思いつくものだ」
「ンッンー!お褒めに預かり、恐悦至極ですぞ!!!!」
「……わが眷属ミリアよ。あれをよく見ておくのだ。ああやって遊んでいる様子を人々に見せて、面白いとか、楽しいという感情を見る人と共有するのだ」
「なるほど……勉強になります!!」
ああ、妖怪じゃないミリアはなんていい子なんだろう。
神様、願わくばこの時間がもう少し長く続きますように。
重マグロ駆逐艦から冷凍マグロを取り寄せるか。
適宜補給しないと放送中に元に戻ってしまいそうだからな。
「わたしはちょっとああいうのは……占いや人生相談ならできますけど、騒ぐのは」
「……そこは問題ないだろう。そういった占いにだって需要というのはある。ようは需要と結び付ける事が大事なのだ」
「ンッンー!まさにその通り!ではポトポトの皆様、こちらにどうぞ!!我々が用意したスタジオがございます!」
「……ほう、これがチャールスの用意したスタジオか」
俺たちはチャールスに連れられて、BARの個室を改造したスタジオに入った。
これはミリア用のスタジオか?全体的にポップでチャーミングな女の子らしい内装。エルフっぽく森っぽい意匠を取り入れているな。まあ金のかかっている事。
「……まさかここまで?最初から計画していたようだな」
「ンン!!実はBARが軌道が乗りましたら、ポトポトに正式な依頼を出そうとは前々から思っていたのですン!しかしミリア嬢はしばらく見ないうちに一段と素敵なレディになりましたな!」
「……人とは成長するものだからな」
ほぼ危険薬物と変わらない効果を持った白マグロのせいだけどね?
「ンッンー!しかしどうしましょうかミリア様はどういったキャラとして皆様に知ってもらいましょうか?」
「私は機人様の巫女です。ですので、機人様の思うように言っていただければ」
「……ふむでは、シスターミリアとかそういった感じで売り出してみるか。つまり――」
「ンッ!清楚系ですな!!『蹴るぞミリアちゃん』とはまた違う方向性になりますが、これはギャップがウケそうですぞ!!」
こいつ……俺の意図を読み取っただと?!
できる!!
「……チャールスお主もなかなかデキる男のようだな」
「ンッンー!機人様もなかなかお分かりの様子」
「……うむ、こういうのは最初が肝心だ、企画と台本を作るぞ」
「ン!!なるほど、ではこういうのは……?」
「わかっているじゃないか、だがあと一押し、ゲームをするならタイトル選びも重要だ。シスターなら、エクソシストとかなんかと絡めてホラーゲームはどうだ?」
「ほう、良い着眼点ですな。ではこちらは――」
「デドリーは対比させたキャラにしよう。シスターミリアと魔女デドリー、これでどうだ?コラボ企画の時もキャラが被らなくて良い」
「ほう!すでにそこまで見越しますか!さすが機人様……」
「あの、機人様……?」
「なにかいつもの悪だくみが始まってしまいましたね、ふぅ。」
「「クックック……」」
俺とチャールスはお互い出せる者を出し尽くすようにして、それから一晩かけてミリアとデドリーの初放送のコンテンツと台本を書き上げた。
そして、ついに初放送の日を迎える事となるのであった。
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