マイノリティ・リポート
俺は状況が完全に理解のキャパを越えて、よくわからん踊りを始めていた。
いやまて、踊っている場合じゃない。
さて、これは事故だ、うん。
しかしラメリカの議員はワインの素材になりました☆彡
なんて説明がとても通るとは思えん。
うむ、これは事故だ。確実に事故だ。
(ナビさん、これはワイン生産時の事故だ。議員が事故死でいいな?)
(Cis. ワインの圧搾機に挟まれたとかにしときますか)
あまり想像したくない死にざまだが、まあ似たようなことになってるしいいか。
迷宮の主のドロップアイテムは面倒ごとだよ!!!!
いらねえ!死ぬほど要らねええええ!!!!
(ひとまず事故報告書をでっちあげるので、現状の宿舎は取り壊しますか)
(ああ、こんな建物使う訳にはいかないからな。誰が案内できるんだ)
パイルバンカーで壁をぶち抜いて正常な世界に戻った俺は、さっそくイギニスまで連れてきたキツネさんたちに解体を依頼する。
素材を返してもらわないと、危なっかしくてしょうがない。
まさか勝手に水爆まで作ってたとは思わないじゃん……。
しかしナビさんの作ったでっちあげ事故報告書。
これが余計な事態を必然的に引き起こすことになったのだ。
その時まだ俺はそのことを……いや、普通に予感できたわ、うん。
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ラメリカ合衆国 「ブラックハウス」
ここはラメリカ合衆国の政治的中枢、ブラックハウスだ。
ラメリカ合衆国は、複数の州国があつまって構成されている。
その州国から選ばれた代表者が「世界大統領」となりラメリカを統治する。
そして、その「世界大統領」が執務を取るのが、このブラックハウスなのだ!!
「われらラメリカの代表として赴いた『ヤマリー・カキントン』が蛮地にて事故死したとのこと……皆の者はこれをどう見るか」
厳かに口を開いたのは、豊かな白髪を撫でつけた、枯れ木のような老人だ。
ギョロリとした目は、まるで燃える石炭のように光っていた。
彼の名はジョニー・カイデン。第114514代世界大統領だ。
この伏魔殿を支配する政治的怪物。まさにそう呼ぶのがふさわしい人物だった。
彼の前に並ぶ、10数人の閣僚のうちの一人が口を開いた。
「恐れながら、世界大統領様……すべてを鵜呑みにはできないかと」
一人の男、彼はカイデンの前に置かれた報告書の前で上申する。
ポトポトから送られてきた報告書はすさまじいボリュームで、あまりの分厚さによって正方形と化していた。
さて、彼が話しかけた大統領という職は、常に危険が付きまとう。
10万台に突入した世界大統領の数がそれを物語っている。
しかし彼はなんと……1週間も大統領の座に座っているのだ!!
通常、世界大統領の寿命は3日とされている。
彼はその倍以上を歴任している。
この事実だけでも、このカイデンが傑出した人物であることを雄弁に示している。
そう、彼が偉大な世界大統領であることを、この場にいる誰もが認めていた。
「であるなら、どうする?」
「ポトゲート事件として大々的に報じましょう」
「ほう?」
「世界を統治する資格のあるアン○ロサクソンが、蛮地で無意味に事故死したなど、とてもあり得ません、別の事が起きていたのです!」
「ポトポトの議員宿舎の地下では、小児性愛者に向けた違法売春、人身売買が行われていました。カキントンはそれに気づいて告発しようとして、殺害されたのです!」
「なんと、そんなことが!!」「おぞましい!!」
「ポトポトはなんて野蛮で遅れた国なのだ!」
「ふむ……しかしその証拠はあるのかね?」
「いえ……表向きはありません。彼らは新世界秩序を作ろうとしている、『悪魔的エリート集団』で、高度に暗号化された文章でその真意を伝達しています。証拠は巧妙に隠されています」
「なんてこと!」「世界はもう終わりなの?!」「ポトポトめ!」
「ですが、我々の暗号解読チームが、彼らの
「ラメリカ万歳!!」「R・S・A!R・S・A!」
ちなみにそれが荒唐無稽なことは、機人が出した書類を読めばわかることだ。
つまり、『まだ誰も報告書を読んでいない』のである!
報告書の見出しとなんとなくの雰囲気だけで、この場にいる者たちは話をしているのだ!!
「その暗号は、一体どのようなものなのだ!」
「それはこの報告書のタイトルにあります。議員会館、これを古代の簡易表現を用いてギイン・カイカンとします」
「これはアナグラムです。「
「なんと!これは否定しようがない、決定的な証拠ではないか!!!!」
「証拠はまだあります。議員を別表記にして「GIIN」とします。IIはノイズとして取り除き、特定の数式でGとNを変換します。すると
「おぞましい。本来世界を正しい方向に導く議員たちに、とんでもない悪魔崇拝者たちを集めていたという事か?クソッ!」
「しかし今ならまだ世界を正しい方向に戻すことができます。それができるのは世界で最も優秀な人種、アン○ロサクソンが統治する国、『ラメリカ』だけです!!」
「これを正すのは神聖な義務だ。このような無法を社会正義の国『ラメリカ』が見逃すわけにはいかないな」
「はい!機人を何らかの名目で呼び出し、全軍を上げて処刑するのです!!」
「正義は我にあり!」「正義は正しい!!」「正義万歳!!!!」
カイデンの目はこれから起こるであろうことを予測し、嗜虐に歪んだ。
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