テンバイヤー

 俺たちは実際何が目本で起きているのか?

 それを街にいって、自分達の目で確かめてみることにした。


 そして、実際目にすると、その異常性に驚かされることとなる。


「……なんだこれは?」


 俺たちはシンシアの案内で、目本の一般的な市場である、超級市場スーパーマーケットと呼ばれる場所に来ている。

 

 この市場は、食料品やキッチン用品、あとは服なんかのこまごまとした生活に使う品物を扱う店らしいが……


 店が開く前に、多くの人間が列をなしている。

 そいつらは両手と背中に大きなカゴをもち、行商人のような風体だ。


 さらに異常に感じたのは。彼らが揃いのハチマキをしていることだ。

 ハチマキにはいくつかの色によっていくつかの種類があるようだが……。


「しっ。あれがテンバイヤーです。彼らはハチマキによって自身の派閥を区別しています。そろそろ始まりますよ、開店時間です。」



「「「ウオオオオオオオオ!!!!!!!」」」

「「「ワアアアアアアアッッ!!!!!!!」」」


 並んでいた者たちは雄たけびを上げ、殴り合いを始めた。

 どこに隠していたのか、木の棒をとりだしている者までいる。


「「サバミソ組をなめんじゃねええぞおおおお!俺は10人殺してるんだ!」」


「「おおおお!!クロサンマ組なめんなあああああ!!俺は出所したばかりの殺人鬼だあああああ!!!!警察を40人血祭りにしてんだぞおおおお!!!!!」」


 うっわ、チェンソーまで出てきた。


「……モノ売るってレベルじゃねーぞ!」


 たちまちに長い行列のできていた道路は、真っ赤な血に染まった。

 地に倒れ、うめくケガ人を助けようとする者はいない。まるで地獄の戦場だ。


「これが目本の現状です。」

「……これはひどい」

「もっとひどくなりますよ」

「……なに?」


 そう、まだ誰もことに気が付いた。

 おそらくこれは陽動なのだ!


 別の集団が颯爽さっそうと数台の車両に乗って現れる。

 彼らは銃と警棒を持ち、青色の対暴徒アーマーを着込んでいる。


 警察かと思ったが、テンバイヤー同士の戦いを止める様子はない。

 そこで気が付いた、連中もハチマキをしているではないか。


 なるほど、連中もテンバイヤーなのか。

 それも上位の者なのだろう。かなり重武装のテンバイヤーだ。


「……これはどういうことだ?まるで警察か軍隊みたいな連中が来たぞ」


「ええ、その通りです。彼らは元目本の警察や軍隊です。いまや軍隊のような公的機関すら、ヤクザマンの戦闘員の養成所となっているのですよ」


「……なんということだ」


 先頭の車両から降りてきた、ベレー帽にサングラスの男、あいつがリーダーか?


「オペレーション=カイシメを開始する!3班に分かれて棚を制圧しろ!抵抗する者は射殺して構わん。捕虜はいらんぞ」


「……射殺とか捕虜って、買い物で出てきていい単語じゃねーだろ!!!」


「力ある物は、ヤクザマンの味方についたほうが良い世の中なのです」


 連中が突入した超級市場からは、断続的な銃声と悲鳴が聞こえてくる。

 これではまるで、本物の戦争だ。


「……なんでまだ目本が残ってるか不思議で仕方がないわ。実際買い占めて、こいつらテンバイヤーは、この後どうすんの?」


「屋台のような手売りでさばきます。定価の2倍から3倍の値段で売られることになりますね。そこから発生する生活苦で、志願者はいくらでも来ますわ」


「テンバイヤーをこういった暴力的なカイシメで喪ったとしても、かれらテンバイヤー=ギルドやヤクザマンにとっては、痛くもかゆくもないわけですね」


「……しっかりとしたサイクルが出来てしまっている訳か」


「はい、そしてこれに反抗しているのが――」


「レジスタンス=ニンジャという訳か?」


「ええ、次は彼らとコンタクトを取りましょう。実はすでに約束をしてあります。自由市場フリーマーケットへとまいりましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る