機人、テンションがアゲアゲになる

 俺は青い光の刃に切り裂かれて、崩れ落ちるイギニスの機人を見ていた。


 やっちまったな。っても、仲良くするつもりはこれっぽっちもなかったし、相手もそのつもりだったみたいだが。


 こいつの若草色のボディは、俺と若干デザインの方向性は違うが、同じ存在だという事を感じさせる。


 なんだろうな?プラモデルを並べると、何となくメーカーとかわかるだろ?

 バン〇イとか、コ〇ブキヤ、同じロボット系でも、違うもんは違うのだ。


 特に関節部分のパーツだな。こういう使いまわしやすい部分は同一規格になっていることが多い。


 見た目はがっつり違って、コンセプトが異なっていても、どこかしら共通する部分とはメーカーによって出る者なのだ。


 そして、こいつは……!こいつのコンセプトはどうみてもボ〇ムズ!!!


 ローラーダッシュにパイルバンカーとか、そのままじゃねえか!!!


 彼にはもう必要ないモノだし、この装備は俺が譲り受けるとしよう。


(ナビ、こいつからカスタムパーツをはぎ取りたいんだが、壊さずに取り外す方法が解らん。どうやればいいか、指示してくれ)


『Cis. では今から方法を指示します――』


 見た感じ、サイズや体に留める機構は同一規格みたいだ。特にネジとか使わずにつけられるのは助かるな。


 ナビの指示に従って、パーツをはぎ取って俺の体に取り付ける。パイルバンカーはその重さを心配したが、思ったよりは変化を感じないな。オートキャノンの反対側に付けると、つり合いが取れて、ちょうどいいくらいだ。


 ウェイトオーバーで動けなくなることはまだなさそうだな。

 膝にキて動けなくなるとか、そんなお爺ちゃんみたいなことになったら笑えない。


 試しにそこら辺の柱にパイルバンカーを打ち込んでみることにする。


「えーと、これでいいのか?穿て!パイルバンカー!」


 腕を柱にかざして叫ぶ。が。

 ……パイルバンカーはうんともすんとも言わない。あれぇー?


「ハッ!まさか、二段階か!?パイルバンカー、チャージ開始!」


 キィーンと甲高い音がして、青白い光とパチパチという放電現象が俺の腕で発生する。うおおおおおおおお!いいじゃんいいじゃん!!


 チャージ!チャージは大事ですよぉ!!!必殺技っぽくなってきたじゃん!!


『パイルバンカー、フェイズ2までチャージ完了――最終チャージ、完了』


 なるほどな。こいつはチャージに段階があるのか。きっと超電磁なんとかみたいなアレで、電圧を高めれば高めるほど、高速で打ち出せるのだろう。


「穿て!!!」


 ドッゴォン!という音と共に、俺は腕に凄まじい反発を感じた。


 光の速さの何分の1かで打ち出された杭は、柱のひとつを造作もなく破壊し尽くした。杭が触れていない、上下1メートルの範囲まで粉々になっている。


 きっと物体が急激に動いたことによる、衝撃波の発生によるものだろう。


 そして、この杭の威力を物語るのは、柱の破壊だけではない。


 衝撃波によって破壊された柱の瓦礫が、弾丸となって壁や窓、ドアを穴だらけにしている。人間だったらショットガンの散弾をもろに食らっているのと変わらないだろう。やっべえなこれ。


 若草色の機人は、伝声管と壁を破壊するにとどまっていたが、恐らくあいつ、このチャージの仕組みをちゃんと理解してなかったんだろうな。


 使いようによってはこれ、遠距離攻撃の代替手段としても使える。

 思った以上にイイもんだったのでは?


 まあ、岩とか柱とか、砕かれるものが必要っぽいけど。


 あとパクったのは、いま足に付いているローラーユニットだな。見た目はまんまローラースケートだ。


 きっと、平地での高速移動に使うものなんだろう。ドカドカ歩くよりはずっと早く動ける。人間の俺はぶきっちょでこんなもん使えなかったが、機械の体だと勝手にやってくれる。


 うん、試しに動き回ってみるとかなりいい感じだ、ただこうなんだろう……

 ぬおおお慣性移動がめっちゃ気持ち悪ぃぃぃ!!


 ほら、ゲームとかでたまにあるじゃん、キャラクターの操作を止めてもちょっと進んじゃって、ジャンプステージの操作がクッソきつい奴。


 ウィッ〇ャー3みたいなアレをめっちゃ強烈にした感じだ。


『機人様は、ガチ引きこも「倫理回路が作動」熱心なインドア派だったのですね』


 おい何だ、今何を言おうとしたナビさん。倫理回路ってなんだよ!!

 おうそうだよ!外に出るよりはお家の中が大好きだよ!悪いか!


『ローラーユニットでの移動に関わる操作を、一部代理しても?感覚を覚えていただければ、機人様も今後、よりいい感じに動けると思います』


「あ、なら頼むわ」


 ナビさんが操作を引き継ぐと、なるほど、地面を切りつけるように移動して止まっている。ぎゅってカットするように止まる。なるほど、こうすんのね。


『ちょっと試しに簡単なトリックをやってみますか。』


「おおおぉっ!?」


 そっから先はナビさんのショータイムゥ!!だった。


 広間の柱の間を高速移動しながらスラロームして抜けたかと思うと、地面をローラーで切りつけて飛び上がり、空中でジャンプして180度回転する。


 そこからの動きがまたやばい、背面に移動しながら障害物をするすると躱していく。俺の足なんだけど、俺の足じゃないみたいにクネクネ動いていく。


 足をつかってローラが一直線になるようにしたり、ハの字にしたりするその違いで、動きにいろんな表情が出る。おもしろ!!


 最後はダンスするみたいにくるっと大きく回転することで、これまでの移動の動きを殺して止まった。なんかポーズまでとっている。


『Cis. お粗末様でした』


 すげえ何これ、超カッコいいじゃん!!


 ――あ!


 そう言えばすっかりミリアたちの事を忘れていた。ローラーユニットで遊んでいたところを、入り口から何事かと入ってきた彼女たちに、ばっちりと見られていた。


 どう言い訳しようかなコレ。

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