イギニスどうしよう会議

「第一回、イギニスどうしよう会議~!」


 パチパチパチとまばらな拍手で始まるのは、ミリアさん、デドリー、ロイに俺を加えた、たった4人の会議である。


 しれっと帰ってきてるデドリーだが、工場の倉庫で簀巻きにされて、あっはんと、「わたしを陵辱しますのね?!何時!今でしょ?!」とピンク色のハートをまき散らしていた。


 古代竜は人選を間違えていると思う。いや、もともと選択肢に正解がないな。

 うちらが大概すぎるわ。それはまあいい。


 会議場所はイギニス郊外にある、ケロケロとカエルの音が聞こえる、湖畔のあばら家である。チャールスの用意したホテルは、盗聴に盗撮、何でもありだったので、こちらで勝手な場所に移動したのだ。


 さて、俺はクラフトメニューで出したホワイトボードに、キュッキュと書き入れる。書いた内容は、「これからイギニスとどう付き合うか」だ。


「……えー、つまりはウチがイギニスから取り入れたいもの、逆に取り入れたくないものだな。それは何だろう?というところから始めよう」


「ッス!ウチからでいいっすか!」


「……うむ、忌憚きたんなく話せ」


「ローニィ一家としては、イギニスの技術に興味津々ッス!」


「蒸気機関ッスか?あれを使って『試製エイブラムス』を作ろうとおもうッス」


「エイブラムス、ドワーフの設計した、戦車だったな?」


「ッス!そのままの再現は無理でも、設計者のコンセプトの再現、それが出来れば、やるだけの価値はあるッス!」


 俺はホワイトボードに、「イギニスの技術が欲しい」と書いた。


「……いいぞ、他には?逆に、いらない者でもいいぞ」


「はい!ミリアが思うのは銀行です。お金を預けて返さないなんて、泥棒ですよ!」


「それはチャールスさんは、ミリアちゃんが1年まてば2倍になるとかいってたけど、どう考えても、うさん臭いものねえ」


「ケケ!あんなインチキな銀行はいらないですね!」


 俺はホワイトボードに、「インチキな銀行はいらない」と書いた。


「……いるもの、いらないものが出たな?どうでもいいものだっていいぞ。組み合わせれば、何かのヒントになるかもしれない」


「わたしはイギニスの民の心が気になりますわね。象人やオーマやムンゴルの人を、檻に閉じ込めて、何も思わない人ばかりなのかしら?」


 デドリーの言う事はもっともだ。

 イギニスの文化や体制。これに疑問を抱いているものは、きっといるだろう。


「……なるほど、興味深い視点だ。」


 俺はホワイトボードに三つ目のセンテンス、「イギニス人はイギニスをどう思っているのか?」と書いた。


「ふふ、いやですわ機人様♡ベッドの中で、デドリーをもっと調べたいのですね♡」


 パァン!とデドリーの後頭部に炸裂したキックを放ったのはミリアだ。

 カポエラ風の倒立状態からのキックだと?!

 何この子コワイ、どんどん突っ込み専用キックの技術だけが上がってる。


「……さて、なかなか興味深い意見が出そろった気がするな。最後に我から」


 俺はホワイトボードに最後の言葉、そして大前提を書き込んだ。

 「イギニスから、ポトポトを守る」まあ、当然だな。


 一番優先しなければいけない目的はこれだ。

 それに使える手段があるなら、たとえイギニスの技術、人、金だって使う。


 俺の中で、対イギニスのプランが大分固まってきた。


「ではこれらを踏まえて、これからイギニスに対して行う事を説明しよう」


 あばら家での会議は深夜にまで及び、そして、次の日から実行フェーズに入った。


 俺の今までのシミュレーションゲーム、そして、プレイヤーとしての性格の悪さを総動員した計画だ。ククク、愉しくなってきたぞ!!


 俺にはゲームとはいえ、性悪さでは数千年ぶんの長がある。

 ひよっこのイギニスに思い知らせてやるとしよう。

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