ローニィ一家の企み
うちらローニィ一家は、ムンゴルに白髭山脈の要塞を追われた後、そりゃあもう長い事、ムンゴルの職人として槌を振るってたッスよ。
そりゃー丸っきり悪い事ばかりじゃなかったッスけど、ムンゴルの空気っていうんスかね?アレばっかりはよろしくないッス!
隣に住んでる連中が、夜中に酒盛りで騒いでたら、反乱を企んでる!なんて通報して、ケシクに金を掴ませて、罪をでっちあげるなんてザラにあるッス!
うわべでは別の家とも、互いに仕事の情報なんかもやり取りするッスよ?
けど、自分ら一家をムンゴルの粛清から守るためにも、技術的な秘訣や知識なんかは、ふつーは大事に外に出さないよう、取っておくもんッス。
だから、お互いに役割ってのを程々に、地道に演じていくのが、ムンゴルで生き延びる秘訣ッス。そんなことに慣れ親しんていた、うちらローニィ一家が、なんでポトポトに突然スパイとして送り込まれたのか?
そいつはたぶん、ムンゴルの鉄砲を作ってる、コルテ一家の仕業だと思うっす。
連中にとっちゃ、うちらローニィはただの下請け、納品の期間を間に合わせるための、都合のいいバックアップに過ぎないッス。
ただ、それでもコルテ一家が大きくなってくると、同業者は少なからず、目障りになってくるモンっす。分家を作ったりでムンゴルの中で発言権を大きくしていくには、うちらが結構邪魔くさいッス。
だから理由を付けて、追い出したんだと思うッスね。
下手に断っても粛清ッス。何で、目を付けられた時点でもう詰んでるんスよねー。
――まあ、いろいろあった結果から言うと?
これ、ムンゴルのために働き続ける理由ある?の一言ッスね!
機人さんの手によって、コルテ一家の鉄砲陣地はボッコボコのケチョンケチョンにされて、数万の騎兵隊が根こそぎ消えた。
ムンゴルの外に出たうちらに、この事をどう隠そうったって隠せないっす。
もうこの時点で、だいぶ心は機人側に傾いてたんすけど、トドメはアレっすね。
ミニ鉄砲!機人さんは「火縄銃」って呼ぶことに決めたみたいっすけど。
ムンゴルの技術開発は秘密主義の性質が強いっす。
お互いの職域を聖域にしちまうッスから、ハーンが新しい国を攻めない限り、うちらにとびぬけた発展っていうのは、基本的に無いんッスよ。
ッスけど、ポトポトやオーマは違うっす!
機人さんたちが自分らで作って、使っている物は、これ以上のもっといい出来なのに、うちらのレベルに合わせた新規設計。
しかも生産方法も含めた指導までしてくれたッス。
そして、チョコからきた貴族のボンボンの、ポルシュとか言う兄ちゃんが自筆してもってきた、連発式火縄銃の設計図。
ムンゴルじゃ普通あり得ないっすよ、こんなの。
試作してみたけど、6銃身は流石に重すぎたし、回転部分に負荷がかかって、壊れやすい。じゃあ半分の3銃身にしよう!そういって、すぐに設計を変更して対応する柔軟性。
これもムンゴルじゃあり得ないっすね。
試作品が失敗した時点で、どいつがわるいって裁判沙汰っす。
このモノづくりの解放的な雰囲気、お互いにアイデアをかわしあう自由。
これこそローニィ一家が白髭山脈でやってきたことッス。
うちらの真の目的、その実現にドドドッと動き出してる感じがするっす。
先々代のまた先々代、そのひい爺さんが、書き上げたって言う設計図。
その名もドワーフ戦車、「エイブラムス」!
きっと、鍛冶神カミモデラの機人様となら、こいつを作り上げられるはずっす!
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