多分スーパーなミュータントってところかね?

 結論から言うと、ダンジョンの中、というかシェルターの中は変なもんだらけだった。

 ファンタジ―やSFを知っている、俺から見ても奇妙な物ばかりなのだから、この時代の人間にとっては神か悪魔か、そんなもんとしてとらえられてもおかしくないような代物ばかりだろう。


 俺は灯油缶に鉄の6本脚が生えた怪物を蹴っ飛ばす。こいつはこれくらいで動きがとまるので、これ幸いと頭から貪ってくう。

 このさまよう灯油缶は見た目通りに燃料を持ち歩いているし、金属も手に入るし、弱いしでなかなかお得な敵だ。見つけたら優先的に狩りたいね。


「往生せいやぁぁぁぁ!」


 ミリアはパッカーンと気持ちのいい音を立てて、シェルターで拾ったスコップを振り回している。

 初めて会った時のアレは何だったのかという感じでバーサーカーしてるなぁ。

 この世界の神職はこういう感じに攻撃的なものなのだろうか?まあ中世だったら僧兵とか教科書でみたことあるし、割とこういうもんなのかもしれないなぁ。


 俺はミリアがベッコベコのバッキバキにした、さまよう灯油缶をいただく。いやあいいペースだ。

 ミリアは意外と、戦闘面では問題ない。戦意旺盛だし、雑魚相手なら任せられるくらいには強い。

 問題なのはデドリーだな。

 いや、デドリーも強さ的には問題ないのだ。しかしだな……


「ふふ、欲しいのね、いいわよ…きて♡」

「その固いのからぴゅっぴゅしちゃいなさい♡」

 言い方ぁ!!


 ちっこい戦闘機から放たれる光弾で灯油缶を穿っているだけなのに、全く別の意味に聞こえる。

 まあ、なんだ、あの格好で甘ったるい顔でああいう事を言われると非常に心乱されるぞ。一種の精神攻撃だなコレは。


「「ヤッター!ミツケタ!」」

「「タタカイヤッター!!タノシィ!」」


 片言の言葉でこちらに寄ってきたのは、俺たちの戦いの音を聞きつけた人間大のモンスターだ。

 見た目はムキムキのボディビルダー、しかし、人間というにはデカすぎるし、体の色が違う。まるで風邪の時の鼻水みたいな、不潔で複雑な、黄色の混ざった緑色をしている。

 手には鉄パイプや木片を握りしめて、闘争心しかない感じだ。


 シェルターの内部にはこういった燃料なんかの資源を運んでいる機械や、謎の小動物のほかに、これくらいの大物もいる。冒険者が必要とされたのはこういうやつらがいるからだろうな。


 多分スーパーなミュータントってところかね?

 このシェルターはよくわからん何かの研究をしていたみたいだし、その名残だろう。


 俺くらいの身長もあるし、あの筋肉でぶん殴られたらちょっと危なそうなので、こいつらに限ってはミニガンを使う。

 俺の手首の6本の銃身が唸って、鉄の嵐となってミュータントを殴りつけるが、腕や足が取れたくらいじゃこいつらは死なない。人間たちよりだいぶ頑丈だ。


「イタイー!!ケガシタァ!!」


 腕がミンチになってるから、どうみても怪我ってレベルじゃないけどな。

 明らかに痛覚に対して鈍感で、アホで戦いを好む性格。きっと世界を滅ぼした要因の一つだろうな、こいつらは。


 弾を食う割に、大したものは落とさないが、痛覚の遮断のために大量の脳内物質を分泌しているらしく、一体の死体で2個の最先端医薬品が作れる。こいつもあたりの部類といって良いだろう。


 このダンジョンは燃料、金属、薬の手に入るなかなかにおいしい場所だ。俺の中ではポトポトのエルフ達に何をさせるべきか、大分固まってきたぞ――。

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