使い勝手がいいとはなんだったのか
人間たちの前哨基地っぽい砦をテミスという爆弾で焼いた後、俺は続けて無人機を飛ばしていた。
いくつかの人間たちの村や町の上を飛んでいたのだが、それでちょっと気付いたことがある。
ミリアが機人さま!もう人間たちの軍隊のHPは0よ!というくらいまでやっておけば、ひとまず時間は稼げるかなと思っていたのだが、ちょっと中世ファンタジーの世界の実際というものを知らな過ぎたな、と思った。
なんというか、軍と民間の区別が曖昧なのだ。
畑にいる人たちは農具と一緒に槍やピカピカの兜を持ってるし、軍隊っぽいバケツ頭の群れは秩序だったキャンプや要塞だけではなく、普通の村にも出入りしている。
そもそも軍事工場みたいなものも無くて、武器を作ってるような工房は普通に農具や鍋釜なんかも置いているようだ。
すべての家々が軍事施設としての機能を持っている、これは厄介だ。
やはりすべての人間の村を焼き払うかなんかしないと、エルフやドワーフ、蛮族と呼ばれる人たちへの攻撃はやむことが無いのだろう。
俺が無人機が抱えている爆弾を今眼下の村に落としたら、それによって多くの人が死ぬだろう。
それによって起きることに道徳的な問題はもちろん感じている。だがなりゆきで助けたエルフと人間は戦争という状況にある。そもそもがすべての道徳に反することを始めてしまっているのだ。
俺はできるだけ大きな街を探してそこにBLU-330スキピオという爆弾を落とすことにした。
なんか聞いたことのある名前だなあ、漫画かなんかにあった気がする。
10分ほどとんだところで、川沿いに城壁に囲まれた都市を発見する。城塞都市というやつか。赤いレンガでつくられた美しい街並みが見える。
俺が人間として転生して、冒険者としてスタートするならこういう街がいいね、もうそれはかなわないけど。
スキピオを選択するとUIに投下位置が表示される。テミスと違って地面をこする楕円の表示はひとつだった。
お、こいつは使い勝手のいい普通の爆弾っぽいな?ではさっそく、ポチっとな!
落とした爆弾はパラシュートを開いてゆっくりと眼下の都市に落ちていく。
おや?なんか雰囲気が違うな?
カメラを回して爆弾を確認してみる。爆弾になにか開口部のようなものが見える。まさかガス弾か?
しかし、眼下の街に何か影響が出ているようには見えない。
これは何だ?猛烈に嫌な予感がして無人機を上昇させる。
上昇させるために操作していると、眼下の街が唐突に表れた丸い炎に包まれた。
オレンジ色をした、お饅頭のような丸い炎だった。
その炎はパっと現れて城壁の内側を飲み込むと、ひと呼吸も無い次の瞬間に白い空気の波を発生させた。
その空気の波は地上にあった城壁、川に浮かんでいた船、それらをすべてバラバラに解体して踏みつぶしていった。
後には平たい土地とそれを囲うリングのような瓦礫の山しか残っていなかった。
きれいさっぱり何もかもが消えた。
使い勝手がいいと思ったがこれは最悪だな。
いやはや、何もかもが無くなってしまったら、クラフトの材料が手に入らないじゃないか。
俺は最後のシュリケンとかいう爆弾に望みを託して無人機の翼を西に向けた。
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