第024話 いやだって俺おまえ嫌いだし
「スッキリしたし、もう終わりにするか」
なんだか戦意が消えたみたいだし、俺は止めを刺すために巨大蜘蛛に近づいていく。ストレスの発散はもう十分だし、戦う気のない相手を甚振る趣味はない。
「ちょ、ちょっと待て……いや、待ってください」
しかし、なんだかすっかり怯えてしまった巨大蜘蛛。さっきまでの尊大な態度は何処へ行ったのか、フラフラの体を動かして頭を地に着けて懇願する。
「なんだ?」
少し可哀そうになったので話を聞いてやることにした。
「どうかあなた様の配下、いや下僕になりますので、命ばかりはどうかご容赦いただけないでしょうか?」
どうやら俺に命乞いをして助かりたいらしい。
「いや、俺にメリットないしなぁ」
「私はこう見えて結構役に立つと自負しています」
俺の心象が芳しくないと思うなり巨大蜘蛛は自分を売り込みだした。
「ほう?どんな?」
「私は蜘蛛たちに命令することが出来ます。それによって色んな場所に入り込み、様々な情報を集める力がありますよ」
「なるほどな。それは中々良い能力を持っているな」
蜘蛛の言う通りこいつの能力はかなり有用だ。
小さな蜘蛛はどこに居ても不思議じゃないので、ほとんどの人間が見逃すだろう。多くの蜘蛛を放てば沢山の情報を手に入れることが出来る。多くの人間にとって欲しがる能力だ。こいつを下僕にするメリットは確かにあった。
「それでは!!」
俺が力を認めたことで地面から頭を上げて喜色を発露する蜘蛛。
ただ、そのメリットも俺なら魔術でどうにかなる。
「ああ、お前を殺すことにする」
「は?」
だから、俺はニッコリと笑って絶望へと落としてやった。
俺は端からこいつを仲間にするつもりなど毛頭なかった。美玲を甚振り、人間を殺しているこいつを生かしておくわけがない。
「は?じゃねぇよ」
「わ、私の能力は認めてくださったのでは?」
俺が凄むと、蜘蛛は焦ったように俺に尋ねる。
「ああ。お前の言う通り有用だと思うよ?でも、それがどうした。下僕にする理由にはならないな」
「くっ。きっさまぁ!!」
俺が呆れるように言ったら、蜘蛛は激昂して立ち上がった。しかし、フラフラしていてもう戦えるような状態ではなかった。
「はいはい、お疲れ様」
だから俺は軽く腕を振るって終わりにした。
「はぇっ?」
巨大蜘蛛から呆けた声が漏れ出す。
―ボトリッ
何かが地面に落ちる。
―ズシーンッ
その直後に蜘蛛の体が糸の切れた操り人形のようにその場に倒れた。
「ば、ばけものめ……」
力なく呟いたのは最初に地面に落下してきた蜘蛛の頭。
そう。最初に俺が切り飛ばしたのはこいつの頭だった。それにより脳からの信号が届かなくなった胴体もその場に崩れ落ちてしまったわけだ。
切り飛ばした部分から体液が勢いよく流れだす。それは命の漏出であった。
「下僕にするわけないだろ。いやだって俺
既に瞳に光を失ったその蜘蛛に、俺は肩を竦めてそう言ったのであった。
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