第017話 ストレスフルの焦らしプレイ
魔力によって身体強化を掛け、来た道を引き返す。
「ちっ」
俺の嫌な予感は当たったらしく、少し進んだら夥しい数の大蜘蛛が通路の奥から次々と侵入してきているのが見えた。ということは対処に当たっていた陰陽師達の方で何かあったという可能性が高い。急いだ方がいいだろう。
俺はスピードを上げる。
「キシャァアアアッ!!」
しかし、大蜘蛛の数があまりに多く、次々と襲い掛かってくるため、弱いと言ってもスピードが落ちざるを得ない。範囲魔法が使えればいいが、建物中では陰陽師協会ごと塵に変えてしまうことになるため使用できない。放っておくのも他に被害がいきそうなのでそれもしたくない。
外なら一瞬で消し炭にしてやるのに……。
物騒なことを考えながらまるでコバエの群れのように飛び掛かってくる蜘蛛たちをウィンドカッターで切り刻んで進んでいくが、なかなかスピードを上げられずに時間だけが過ぎていく。
「ちっ。一体何匹いんだよ!!ちまちまちまちまちまちま!!あぁあああああっ鬱陶しい!!」
その余りの数に思わず舌打ちを鳴らした。
俺は戦いながら異世界でキリングアーミーという蟻モンスターの巣の駆除した時のことを思い出した。あの時は数万という蟻のモンスターと戦うことになって辟易したのを覚えている。
自分以外の冒険者と一緒に戦う作戦だったから巣の中を一気に焼き殺すという手段が取れなくて、今日と同じようにちまちま倒していったんだよな……。
俺だけなら一瞬で終わらせられたのに本当に無駄な労力を使わされた。
なんだか思い出したらムカムカしてきたな。
「邪魔だぁああああああああっ!!」
俺はその苛立ちをぶつけるように大蜘蛛をバラバラにしながら突き進んでいく。
この場面だけ見たら俺はかなりヤベェ奴だよな。
―ドンッドンッドンッ
それから二十分ほどしてようやく他の術士が戦っているらしい爆発音が近づいてきた。かなり激しい戦いをしているらしい。
「やっとか……」
俺はまるで永遠に続くかと思われた大蜘蛛の殲滅の終わりが見えて安堵した。
何匹殺したか分からないが、俺の後ろには帯びたたしい数の大蜘蛛だった物が転がっている。それでもまだ前からわらわらと俺の方に向かってくるのが見えた。
とんでもない焦らしプレイしやがって……。
閉所かつ味方や助ける対象がいる場所でこの数は反則だろ。
ただ、これだけの数の群れとなれば絶対に指示を出しているやつが居るはず。
そいつだけは絶対許さねぇ。ボコボコにして生きてたことを後悔させてやる!!
「ふふふふふっ……」
俺は暗い決意を浮かべながら、ひたすら作業のように敵をウィンドカッターで切り飛ばす。後数メートルで陰陽師と妖がぶつかっている思しき場所。遂に俺の復讐相手が目前に迫った。
「どこのどいつだ、こらぁ!!」
開けたその場所に足を踏み入れた瞬間、大蜘蛛のボスに喧嘩を売るように叫んだ。
しかし、俺の視界に入ったのはボロボロになった演習場と、陰陽服の首の後ろを持ち上げられてグッタリとしている美玲の姿。
そして、彼女は今まさに大蜘蛛とは比べ物にならないほどに巨大な蜘蛛の足によって刺し貫かれようとしていた。
◆ ◆ ◆
時は秋水がたどり着く少し前に遡る。
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