第012話 皆の憧れ、異質な特性、特〇系!!
「なんでこんなところに美玲がいるんだ!?」
「そ、そっちこそ霊力ゼロのあんたがこんなところにいるのよ!?」
俺たちはお互いに質問を投げかける。
どう考えてもあっちから関わらなくなった相手が指導役をやるとは思わないだろ。
しかし、それは美玲も同じだったようだ。それも当たり前だよな、俺は霊力ゼロの鬼一なんだから。
「俺は霊力が覚醒したんだよ。だからこうして講習を受けに来たんだ」
「いやいや、あんたからは全く霊力を感じないわよ?イカサマしたんじゃないの?」
俺はここに理由を述べたら、真顔で顔の前で手を振って痛いところを突いてくる美玲。
くっ、やはり陰陽師は霊力を感じ取れるのか。魔術師も魔力を感じ取れるから当然と言えば当然か。父さんもその違和感をきっかけに気付いたのかもしれない。
気を付けなければ。
「そんな訳ないだろ?霊力測定器がちゃんと数字を出してくれたんだから」
「ん~、おかしいわねぇ……測定器が故障するとも思えないし……一体どうなってるのかしら……」
俺が霊力測定器の数値を強調して答えたら、美玲は反論できずに考え込んでしまう。
「ほらほら。まぁいいだろ。早く教えてくれよ」
「はぁ……なんでこんなやつに教えなきゃいけないのかしら」
俺がそれ以上深く考えさせないように美玲を急かすと、彼女はため息を吐いて嫌そうな顔をした。
霊力ゼロじゃないってお墨付きを貰ったんだからそんなに嫌がらなくてもいいだろうに。
「おいおい、仕事なんだからちゃんとやってくれよ」
「はいはい……仕方ないわね。まずは霊力の込め方を教えるわ。そのついでにあんたの霊力属性を調べるわ」
俺が呆れ気味で言ったら嫌々ながらも指導を始めてくれた。
そうこなくっちゃな。
「霊力属性?」
まず分からない単語が出てきたので質問する。
「陰陽術は木、火、土、金、水の五つの属性で成り立っているの。五行説っていうんだけどね」
「ふむふむ」
異世界では、火、水、風、土、光、闇、氷、雷の八属性だったので非常に興味深い。
「儀式で霊力を込めた時の反応を見ることでその属性を調べることができるのよ」
「ほほう」
前世と似ている手法が陰陽術の世界にもあるようだ。前世では属性に対応した色の石があり、その石に魔力を流すことで適性を調べていた。
「それじゃあ、準備するから待ってて」
「分かった」
美玲は地面に五芒星を描き、最後に頂点をつないで円を描いた。その後、その各頂点に上から時計回りで植物の苗、焚火、土、鉄、水を配置した。同じことをもう一度繰り返し、二つ用意する。見本用だろう。
「それじゃあ、霊力を流してみるわね」
「ああ」
美玲はその魔法陣に手を翳す。美玲の手の先から見えない何かが放出された。
これが霊力か。俺は霊力はないが、魔力が目覚めたことで魔力以外の力を少し感じ取れるようになったらしい。
霊力の分析をしていたら、金属がドロドロに溶け、焚火が一瞬にして燃えきって灰が土になった。
「おお!!」
なるほど。こうやって反応した属性を見るわけか。面白い。
「私がやるとこんな感じになるわ」
やって見せてくれた俺の方に向き直る。
「面白いな!!」
「まぁね。あんたもやってみなさい」
「分かった」
俺は美玲がやっていたことを魔力で再現してみた。
そしたら、木の苗がみるみる育ち、火が柱のように燃え上がり、灰から土が溢れ出し、土の中から金属のインゴットみたいなのが出現してどんどん巨大化していき、金属から水が溢れ出した。
『……』
その場を沈黙が包み込んだ。
これってなんかヤバそう雰囲気……?
俺達どころかこの場にいる全員が一切の言葉を発さず、身動きもしない異常な状況に、俺の頬を一筋の汗が流れ落ちる。
「えっと……これはどうなるんだ……?」
「ありえないわ……まさか太極属性だなんて……」
耐えきれなくなって、恐る恐る美玲に問いかけたら、彼女は呆然としながら呟いた。
明らかに尋常ではない様子で聞いたことのない属性名を呟く美玲に、俺は自分がまた何かをやらかしてしまったことを理解した。
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