第14話:チートの破壊者
ユニコーン……アメリカの話か?
いや、そんなん見たことも聞いたこともないぞ。
そんなことを考えていたら既に決闘は始まっていたらしく、タイクーンが細身のレイピアをこちらに向けている。
対してこちらはさっきタイロックから分捕っておいた槍なのだが、俺の予想が正しければこれを使うとヤベーことになる。
「んじゃま、小手調べといくかぁ!」
先ずはいつも抑えている戦闘力を二段階まで解放してからタイクーンの腹をブン殴る。
タイロックですら二段階まで解放した俺には勝てないくらい強化されるのだが……その強化された拳を喰らっておきながら顔色一つ変えていない。
「クッ!」
訂正、俺の攻撃を喰らってから飛び退いた時の顔は焦っているものであった。
ダメージ無効化か……いや、反射だな。
あいつを殴った手に、殴った分のダメージが入って少し血が出ていた。
まぁ超再生のチートがあるからすぐに治ったから何も問題ねぇんだが。
とはいえ、これで確信できた。
「お前、実は異世界転生者じゃねぇだろ」
「ッ!?」
表情を見るに図星らしい。
異世界転生人のチート能力ってのは肉体に具え付けられるもんだ。
なのにアイツの反射はその前に発動していた。
つまり、当たり前にダメージを反射させることでダメージを受けないようにする防具……まぁ過去のチート持ちが作ったアーティファクトなのだろう。
「とはいえ、チート級に反則な防具を持ってたから自信満々出てきたってところか」
咄嗟にタイクーンが胸元にあるペンダントに手を当てる。
なるほど、それか。
それを奪ってしまえば俺の勝ちなんだが……それじゃあつまらん。
折角チート級のアイテムを持ってんだ、それなら真正面からぶち壊すのが王道ってもんだろ。
「痛くはねぇだろうが覚悟はしとけよお坊ちゃんよぉ!」
そう言って俺はタイクーンの足を掴み、上空に跳ぶ。
そして地面目掛けて思いっきりブン投げた。
地上で爆発音がし、着地する。
タイクーンは無傷でありながらも、倒れていた。
だから俺は再びそいつの足を持って上空に跳んだ。
こいつの反射は相手の力をそのまま跳ね返すという性質を持っている。
だからブン投げて叩きつければ衝撃によって発生した反射ダメージは地面に吸われるというもんだ。
そうして何度も何度も俺はタイクーンを地面に叩き付けた。
昔、世紀末な格ゲーで見たドリブルコンボみてぇに。
もちろん投げられるがままにはならないように逃げようとするが、俺の速さには勝てない、また足を掴まれる。
「クッ、こんなことをいくら繰り返したところで無意味だぞ!」
「さぁて、そいつぁどうかな」
これがお前のチートであればいくら投げたところで地面に穴が空くだけだっただろう。
だが、そのチートは道具によるものだ。
そしてその道具はいつ作られたものかな?
過去の異世界人がチートで作った装備だとしても、作られてからどれだけの歳月が経ったかな?
これはタイクーンとの決闘じゃない。
こいつが持つチート装備の耐久年数との戦いだ。
何度も何度も叩き付ける。
タイクーンの胸元からピシリと音がした。
「ま、まさか……ッ!?」
「そぉらこいつでトドメだ!」
俺はタイクーンを上空へブン投げる。
空に吸い込まれるように、タイクーンは徐々に小さくなり見えなくなった。
そしてしばらくしてから大きな激突音が響き渡り、土煙が会場を包み込んだ。
タイクーンの胸元にあったペンダントは最後に主人を守り、粉々に砕け散っていた。
肝心の主人は何度も投げられたせいで平衡感覚が狂い、立つこともままならない。
つまり、この決闘―――。
「俺の勝ちだぁ!」
俺は拳を振り上げ、勝ち鬨を上げた。
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