062 問題続出
「やはり、どう考えてもおかしくないか?」
ここは帝都のお城。新年に行われた祝賀パーティーも終わり、フレドリク皇帝の執務室にイケメン4が集められて話し合いが行われていた。
「辺境伯は二度に渡る呼び出しに応えず、長男を送り込んで来たのだ。私を避けているようにしか思えない」
フレドリクも馬鹿ではない。誰の案かはわかるわけがないが、嫌がらせには薄々気付いている。
「褒美の勲章を渡すついでに移動禁止令を無視していることも問い詰めたかったのに、肩透かしに終わった。もう一度呼び出すべきか?」
肩透かしに終わったのはルイーゼ皇后のせいなのに、そのことには触れずに皆に相談。その時、ヨーセフ・リンデグレーン宰相から手が上がったので喋らせる。
「こちらから出向いたほうが早そうですよ」
「しかし、私が帝都を空けるわけには」
「陛下ではなく、私が行って参ります。昨年の辺境伯領の税収は明らかにおかしいので、厳しく調査をしたいと思っていたところだったんです」
「確かに帝都と同じように元奴隷をあれだけ受け入れているには、おかしな数字だな」
一同、辺境伯領では不正が行われていると非難の声があがるが、カイ・リンドホルム騎士長だけは黙っていたのでフレドリクが何故かと質問した。
「いや、なに……俺は財政にはノータッチだからわからないんだが、帝都では元奴隷に仕事を与えているのかと思ってな」
「いちおうできそうなことは……」
「炊き出しなんかは協力するようにはしてますよ」
「そこじゃないか?」
フレドリクとヨーセフの答えに、カイは思ったことをそのまま口にする。
「辺境伯領では、誰もが働いて給金を得ていた。ここは給金を払っているのか?」
「いや、飢えさせないことで精一杯だから、そこまでの余裕がない……仕事も少ないから就業率もかなり低いな」
「つまり、税金を納める人数が極端に低いと……」
カイの質問に、フレドリクとヨーセフは答えに行き着いたので、この日は財政の洗い直し。後日、また同じメンバーを集める。
「マズイぞ……富裕層がほとんど出て行っている。商人の数も減っていた」
ここでようやくフレドリクたちにも危機感が生まれる。なので、商人の流出を食い止める法律は作ったが、商品がないことには商人も仕事ができないから移動の制限はできない。
「いっそう辺境伯領と同じことをしては……」
なかなか決定的な案が出ないなか、カイがボソッと呟いた言葉に皆が反応する。
「「「エステルのマネを~??」」」
「ああ。俺もそこは引っ掛かった」
しかしながら、言い出しっぺのカイまでしかめっ面して、却下。どうしてもエステルから教えを乞いたくないのだろう。
「まぁ、財務調査するのだから、元奴隷がどのような仕事をしているかはわかるはずですよ」
すると、ヨーセフが折衷案を出したので、これはパクリではないと思い込むことで落ち着いた。しかし、フレドリクにはまだ心配なことがあるらしい。
「辺境伯領まで行くなら、他国から麦を買うことはできないだろうか?」
そう。これだけ元奴隷が帝都に集まっているのだから、今年の収穫量の予想がつかないから心配なのだ。
「少し長旅になるが、頼めないだろうか?」
「そうですね……私が行ったほうが、商談がまとまりやすそうですね」
「ありがとう!」
こうして危機的状況を脱する話がちょうど終わりを迎えた頃に、ノックの音が響いてルイーゼが入って来た。
「お話中ごめんなさい。モックンにお話が……」
「気にするな。ルイーゼならいつでも歓迎するぞ」
フレドリクは隣のイスに座るようにエスコートすると、ルイーゼはモンス・サンドバリ神殿長に体を向けて相談が始まる。
「親も家もない子供が増えているみたいで、かわいそうでかわいそうで……どうにかならないかな?」
「そうですね……孤児院も満員ですので……そういえば、富裕層は勝手に出て行ったのですよね?」
ルイーゼの相談はまた厄介事であったが、モンスがアイデアを出してフレドリクに振ったら頷いてくれる。
「だな。いらないと言っているような物だから、徴収しよう」
「ありがとうございます! これで多くの子供を救えますよ!!」
「うん! フックン……ありがとう!!」
「いいって。ルイーゼのためだからな」
ルイーゼの厄介事も、深い懐で受け止めるフレドリク。ルイーゼがいるだけで、全てが解決したような気持ちになるフレドリクたちであった……
ところ変わって辺境伯領……
「殿下、少し問題が……前回の救出班が子供ばかりを連れて来てしまったのですわ」
ここでも浮浪児問題が起こっていたので、エステルは何かいい案がないかとフィリップを頼っていた。
「ええぇぇ~……そんなの神殿に任せておけよ~」
でも、フィリップはやる気なし。面倒くさそう。
「そこも満員で断られたから相談していますのよ」
「ええぇぇ~……里親とか見付けられない? 元奴隷に押し付けるとか……あ、仕事はできないだろうから、昼間は青空教室でも開くといいよ」
フィリップは面倒くさそうにしているけど、アイデアは出るわ出るわ。エステルはそれらを全てメモに取り、ホーコンに提出して、手っ取り早いところから手を付けて無事解決するのであった。
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