第2話(5) 高校へ行こう
『安藤道男』
俺様は緑色の癖に黒板と呼ばれる大きな板に、硫酸カルシウムを小さく固めた棒で大きく名前を書いてやった。
従属したつもりはないが、ボタンや胸に高校のシンボルがあしらわれたブレザーを着ている。特に気に入らんのはネクタイで首を窮屈にしないといけないところか。
収容する教室には俺様、教師、学徒が三十人。その中には
修行を始めてから一週間が経った。習得した技は十。
朝四時に起床。
XRトレーニングルームの掃除をした後、場を清める為の歩き方で北斗七星を描く。準備運動を三十分したら習った技を振り返る。
朝五時になったら雅が来るので習った技を見せる。
技、儀礼の完成度が雅の中の基準を超えていれば新しい技を習得できる。
そうでなければ、箱の隅をつついた様な改善点を言ってくる。
特に儀礼が面倒だ。魔力を感じられるくらいの効用が得られるのなら、労力は惜しまんのだが。
朝七時三十分を過ぎた頃になると、雅が高校へ行く為の支度で離れる。
帰ってくるのは十六時を過ぎた頃だが、実際に師匠をするのは早くて二十時以降。睡眠は合わせるから二十四時くらいだ。
つまらん。
未だ否定する者は攻めて来ず。
半日以上は何もない空間で修行。
つまらん。
刺激が新たな技を習得できるか、できないか。
飽きたな。
高校へ行こう。
修行は続ける。
何故あの時負けた。
俺様と雅の違い。
男か女か、この性差は覆せない。
計羅討凄流古武術を習得しているか、していないか、負けたが覇道の使い手としての差は僅か。半分会得すれば俺様が勝つ。
高校とやらに行っているか、行っていないか、そこに違いがあるのかもしれん。
流行や流言、美醜、笑えるか笑えないか、他人を意のままに操らんとする政治力が渦巻き。どの存在とエロティシズムを結べるか、結べないかに耽溺した世界と認識している。
だがそれは俺様の決めつけで、実際は違うのかもしれん。
エクスカリバー内の人間も高校に行った事がある筈だ。
どんな場所か聞こうとしたら避けられた。捕まえてやろうかと思ったが、雅の耳に入ったら破門になる可能性が高いだろう。
「…………高校?」
暗い部屋。俺様はオリヴィアに高校がどんな場所かを尋ねた。
「ウェイウェイ、イベントと写真、色恋が脳みそに詰まった一軍がカーストを支配している闇の深い世界。二軍は一軍にこびへつらい、一軍になろうと必死で蹴落とし合い。三軍以下の私はいない者だから足を踏まれても謝らないし、陰口叩き放題。一軍の暴政で眩しいノリを押し付けてくるの。ノリハラよ。ノリハラ………………………………………………………………」
0.001パーセント。高校の話が聞けるかもしれんと思って聞いてみたが「ブツブツ」俺様の偏見を倍以上濃縮した呪詛を延々と垂れ流している。
咎めはせん。離れるだけだ。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
影森に高校がどんな場所かを聞いて一秒後の反応だ。
「殺気はしまってくれ。安藤君」
嘆息。
「まずイマドキの高校に番長なんていないからね」
「いないのか。骨のある奴は」
「いない、いない。君よりイキっている子なんていないよ」
間違いなく俺様を愚弄したな。
「正直、一日中ウチに引きこもって、計羅討凄流古武術の修行をするのが楽しいのかと思っていたんだけどね」
貴様は一日中ベルフェゴールの如く怠惰に椅子に座っているだろ。
「不思議に思ったのだ。何故、雅は一日中、計羅討凄流古武術の修行をしていないのに強いのか。
「ふ~ん、雅ちゃんがいなくて寂しいんだ~」
短絡的に色恋へとつなげてきたか。
「俺様は大手を振って高校へ行けるのか、行けないのか、どっちだ?」
影森の不敬を四度許した。今は要求を通す事が肝要だ。
「え~、安藤君。ほんとうに行くの~」
「行くぞ」
「安藤君に高校は合わないと思うけどなー。校則は…………ゴーイング俺様ウェイだから置いとくとして。勉強大丈夫? 超絶退屈だよ」
「行くぞ」
「それに君って一般的な学生とほら精神構造が違いすぎるでしょ。確定でボッチになってツマンナくなる可能性大なんだけど」
俺様を高校に行かせまいと影森が言いくるめてくる。無駄だ。
「行くぞ」
「本当に?」
くどいぞ影森。
「行くと決めたのだからな。貴様が全力を出して止めに来ようが、雅から破門されようが行くぞ。素直に許可した方が書類仕事の量も少なく済むぞ」
一瞬、影森が笑顔を浮かべる。
例えるなら血の池地獄にけばけばしく光る毒気。
奴が俺様の意に沿わぬ行動をしたら殺す。
「あーもうわかりました。行っていいです高校」
俺様は覇道の奥義を繰り出せる状態にある。
「えーっと、後でテストをするから、それには合格してくれよ。高校は勉強をする場所だからね」
「いいだろう」
俺様が構えを解いたのは司令室を出てからだ。
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