俺様は世界を創れるんだが、人間にまで弱体化した

シャノン・ディラック

導入ファーストコンタクト

 むにゅ。




 つかみやすく柔い触り心地。


 目を開けると、俺様は人間の女を押し倒していた。




 大人びた顔立ちだが、女の年は十代半ばか。紺寄りの髪は少し短め。


 女のみずみずしく仄かな甘いにおいも久しぶりだが、それよりもたくさんの食い物のにおいがしてくる。




 建物の中にも関わらず火もないのに明るい。光源は電気を光に変換しているな。感じる温かい空気の流れも同様だろう。




 さて、俺様にたくさんの視線が注がれている。




 取り囲んでいるやじ馬の数はざっと三十から四十。ごちゃごちゃとうるさい。


 その上、カシャッや妙なピロピロリーンと力の抜ける音に、眩しい光りがそこかしこで明滅している。




 俺様がいわゆる市場にいるという事は理解した。


 問題は、何故ここに俺様がいるかだ。




「こ、これは、不幸な事故、と言う事にしてあげます。だから、今すぐどきなさい。これは警告です。五秒数え終わるまでにどかなかったら蹴ります」




 女が少し熱を帯びたしかめっ面でなにやら話しかけてくるが、俺様にとっては些末な事だ。


思い出さなくては。俺様がここに至るまでのいきさつを。

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