誘い

バブみ道日丿宮組

お題:箱の中の人体 制限時間:15分

 今日は彼女の家にお呼ばれした。

 ボディガードがいる彼女は普通は近寄ることすらかなわない。不良学生なんて眼中になく、かといってイケメンに興味があるわけでもない。

 彼女が選んだのは、僕だった。

 何の才能も、顔がいいわけでもない。

 それでも近寄ることができたのは、僕だけだった。

 おかげで僕にも24時間ボディガードがつくようになった。

 そんな彼らの車で彼女の家へ。


「お、お邪魔します」

 高級マンションの最上階に彼女は住んでた。

「そんなに固くならなくたっていいのよ」

「え、えっと……」

 汚したりなんかしたら、一生かかっても返せないお金がかかりそう。

「別にここじゃ、あなたに注目がいくことはないんだから大丈夫よ」

 バラのように美しい笑みだった。

 これで何人もの男子が恋をして、すぐに後悔する。

「今日はあなたに見てもらいたいものがあって、きてもらったの」

 そういう話をボディガードに聞いた。

 彼女とは直接は話すものの、連絡先の交換なんてしていない。

 だから、基本連絡はボディガードからくる。

「そういえば、連絡するのが不便だからあなたの連絡先を登録させてもらったから」

「そ、そうなんだ」

 ボディガードから聞いたのだろうか。

「じゃぁ、こっちにきて」

 僕の家よりも6倍も広い空間を歩きながら、彼女の背中を見つめる。

 ほんと……高貴な人だよな。僕なんかが側にいていいのだろうか。

「入って」

 とある扉の前で彼女は止まり、開けた。

「う、うん」

 断る理由もなくて、部屋に入る。続くように彼女が入った。

「ずっと一緒にいられないから、これを作ってみたの」

 部屋の中には一つの白い箱があった。

「え、えっと……これは?」

 近づいてみると、人形が目に写った。

 見慣れた顔。

 つまり僕の顔が人形にある。

 上から下まで見ると、いつも見る肉体がそこにある。

 全裸だったので、余計にはっきりと理解できた。

「触ってみて」

 言われるがまま触れてみる。

 ほんのりと暖かく柔らかった。まるで人間みたいに。

「さすがに動くのは作れなかったの。でも、こうやって温もりのある人形なら作れた」

「う、うん」

 それはわかった。

 でも、どうして僕そっくりの人形がここにあるのかを頭が理解できてない。

「もっとあなたが欲しくて、こうしてしまったの」

「ぼ、ぼくもにんぎょうになれと?」

「違うわ。私の物になってほしいの」

 人形ってことなのか。

「大丈夫。あなたのことは好きだから、大切にするし、大切にされたいと思ってるの」

 愛から人形を作ったとして、告白の道具にするのはどうなのだろうか。

「どうなのかしら? 嫌なのかしら?」

「う、ううん。ちょっと驚いただけ、人体もこうやって再現できるんだなぁって」

「そうじゃないわ。付き合ってくれるのかって話よ」

 そうですよね。

「いいけど。僕でいいの?」

「いいのよ。じゃぁ、今日から一緒に住みましょう」

 話が大きくなってきた。

「家族の人には了承をとってあるわ」

「はやいね」

 周辺問題は解決済みか。

 なら、僕は逆らうつもりはないけど、逃げることはできないだろう。

 少なくとも彼女のことは嫌いではない。

「じゃ、じゃぁよろしく」

 手を伸ばし握手をしようとすれば、唇を奪われてしまうのであった。

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誘い バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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