社畜は仕事の為なら死んでも身を削る
家に帰ると早速ペンと紙を用意して条件をまとめた。
アシルから言われた出店の条件は
・飲食店ではない
・星の収穫祭を感じられる物
・子供が喜ぶ物
・魔法石の欠片が消費できるとなおいい
と言う物だった。
確かに飲食店は品質管理が大変そうだし、料理もそこまで得意じゃないので安心した。
次は星の収穫祭を感じられる物という条件。
星の収穫祭は『星の乙女が戦場へ行く婚約者のために星の欠片をプレゼントしたところ、戦場で星の欠片が男を護った』という昔話になぞられたお祭りで、星形の物やランタンがよく売れる。
女性はこの時期に咲く星型の花を意中の男性に贈って告白する、なんてこともある。
前世でもお祭りといえばキラキラした物も星型の物も子供達が好んでいた。何か流用出来そうだ。
そして最後の条件魔法石。
魔法石は魔道具を動かしたり、ポーションを作ったりするのに使う。しかしそれらに使うためにある程度加工をしないといけないのだが、その加工をした時に出る小さな魔法石の使い道にアシルは悩んでいた。
しかし魔法石は魔力を入れなければただの石。何か使う方法はないだろうか…
この世界は魔法は存在するが一部の人しか使えない。私は治癒が一番使えるが、他の魔法も少しだけなら使える主人公チートがある。両親は『変換』の魔法が使えたため仕事に出来ていたが使えること自体一般的ではない。それも子供相手となると、魔法が使える子供なんて殆どいない。
「悩むー!!」
悩みが頂点に達しテーブルに突っ伏すと、サンプルでもらった小さな魔法石が手に触れた。
大きさは小指程度で見た目は何の変哲もないただの石。
「これくらいの石をネックレスにして光ったら子供も喜ぶだろうけど、時間がなぁ」
魔法石をつまみ試しに光魔法を入れてみた。
魔法石に光魔法を入れると魔法石の大きさに応じて長く光り続けるのだ。
「主人公チートってすごいわね」
摘まれた魔法石綺麗に光ったが5分程で光を失った。
「こんな短いんじゃ子供もがっかりよね」
諦めるように魔法石をテーブルに投げると、他の魔法石に当たって手元まで返ってきた。そして当たった方の魔法石は投げられた石と同じ勢いでテーブルから落ちていった。
「え?」
魔力が入った魔法石は他の魔法石と干渉し合う特性がある。その為一度魔力を入れた魔法石は他の魔法石とは一緒に保管できないのが常識。
しかし干渉し合うのなら、互いに同じ魔法をかけて干渉させ合えば長く続くのでは?
閃きをすぐさま行動に移すべく、2つの魔法石に光魔法を込めた。そして近くに置くと互いが干渉するように2つの石がゆらゆらと光の強さを変えながら長く光り続けている。
そのまま2つの魔法石を麻紐で縛り、光を観察すること4時間。魔法石はやっと光を失った。
「こ、これだー!!」
この長さならお祭りの間は楽しめるし、入れる魔力量もとても少ない。
さらに紙を染色する塗料を使えば色も変えられるかもしれない。
ネックレスだけじゃなくて他の形にも応用できるかもしれない。
「夢が広がる!楽しい!」
いつしか夜になってしまったが、部屋の中は魔法石に照らされ明るかった。
結局社畜魂は死んでも治らず、仕事のこととなると身を削ってしまう。考えるのが楽しくて夢中でペンを走らせ考えていたが、気がつくとテーブルで寝ていたようで、結局今日も腰痛から1日が始まった。
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