攻略対象と出会わない方法を考える

リサはドアを開けて荷物を受け取った。

荷物は小さな小包と封筒。


「何の荷物だろう」


この世界のことも全く把握出来てないのに荷物というイレギュラーなプレゼント。不安を抱きながらまず封筒を開けた。


封筒には「ポーション売買契約書」と「商人からの手紙」が入っていた。

ポーション売買契約書を読むと、元々は両親が契約していた取引契約だが、死去に伴いリサが売主になる、というものだった。

商人からの手紙には「リサも14で独り身になるなんて大変だな。気を落とすなよ。何かあれば頼ってくれ。 アシル」と書かれていた。


…アシル

同じ年の商人の息子で、何かと気にかけてくれる少年だったことを思い出した。そしてこの都合の良い手紙のおかげで自分が14歳であることを知ることができた。



私の記憶上魔法学校に入るのは16歳。季節的に今は秋っぽいのであと1年半位猶予がある。入学のタイミングまでに治癒魔法がバレなければ入学することはなく平穏にこのまま暮らせる。

そしてバレるきっかけはこのポーションなのだ。


両親が作っていたポーション作りを継ぐが、そのポーションの効き目が良すぎると評判になり、内容分析され内容物の効果だけではなく治癒魔法が含まれていることがわかる。魔法省はその作り手である私を見つけ出し魔法省に連れて行く、というのがプロローグだ。


ということは、ここでポーションさえ作らなければ入学しなくて済む?


正直前世で身分の高い本社の方々にこき使われたので、もうそんな経験はしたくない。しかし魔法学校の生徒は貴族と王族ばかりで平民はレア中のレア。そこでテンプレートのようにいじめられ、攻略対象に助けられ恋に落ちる、というものだが、恋愛をしたい訳でもないし、生まれ変わってもこき使われるなんて勘弁してほしい。



私は早速ペンを取り返事を書いた。


-アシル。お気遣いありがとう。でもポーションを作ると両親を思い出し辛くなるの。他に何かお仕事があればお願いします。リサ-


うん、上出来。真っ向から断らずそれっぽい理由をつけて断ることが出来ていると思う。

学園に入らないなら仕事をしないといけないから、何か他の仕事を回してくれるといいんだけど。ないなら酒場や食堂で働こうかな。


少しづつ見えてきた未来に不安がありながらも期待が持ててきた。


すぐさま返信に封をして出しに行こうと思ったが、小包を開けることを忘れていたことに気づく。


「こっちも重要なものが入ってたらいけないわ」


小包には送り主の名前はなかったが、中に書いているかもしれない。

封筒を一旦置いて小包を開けるとそこには小さな鏡が入っていた。


「かわいい!」


小さな宝石で飾り付けられた鏡はいわゆるスマホサイズで持ち運びも簡単そうだった。


記憶がリンクしてから自分の顔を見てなかったので鏡で自分の顔を鏡で確認しようと覗き込んだが


「え?」


その鏡に自分の顔は映らなかった。

代わりに


クロエ:0

シェリル:0

レーイ・アーヤ:0

????:0

????:0

????:0


という記憶にある文字列が書かれていた。



「こ、好感度チェッカーだ!!!!!」


名前が書かれているのは攻略対象の婚約者達。そして数値は好感度だ。

ゲームをクリアするためには攻略対象の数値を上げるだけではなく、周辺キャラの好感度も気にする必要がある。

そしてその好感度もプラスだけではなく、時にはマイナスにする必要があり、見えない攻略対象も好感度と可視化された周辺キャラの好感度のバランスが難しく数々のプレイヤーを苦しめたこのゲーム攻略において最重要すべきものなのだ。



「こういうのを見るとほんとゲームの中に入ったって実感するわ…」



この送り主の分からない好感度チェッカーを見るとゲームの強制力に気が滅入ったが、そもそも入学しなければ好感度なんて気にしなくてもいいのだ。


気持ちを切り替え鏡を引き出しにしまうと、アシルへの手紙を出しに家を出た。

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