第3話
次の日の朝ルイホルム公爵家の屋敷ではユーゲルスと使用人達と話をしていた。
「なにレイラが公爵家から出ていっただと?」
すると使用人の一人であるローラがユーゲルスに言った。
「はい、昨晩のうちにこの屋敷から出ていかれたようです。そして旦那様にこの手紙を渡すようにと。」
「手紙だと?」
ユーゲルスはいぶかしげに答えるとローラからその手紙を受け取りその託された手紙を広げて内容を確認した。
レイラは公爵家を出ていく時にユーゲルスに対する置手紙を使用人の一人であるローラに託して出ていったのだった。
置手紙にはこう書かれていた。
「あなたへ、もうあなたへの愛はとっくに枯れ果てました。これからは別々の道を歩んでいきたいと思います。ですのであなたとは離婚させて頂きたいと思います。もう公爵邸に戻るつもりはありません。もうあなたの顔を見たくもありませんから。それではさようならあなた。レイラより」
「レイラ様はもうこちらには二度と戻らないと言われておりました。」
するとユーゲルスの部下であるマスタングが言いにくそうにユーゲルスに言った。
「大変申し上げにくいのですが公爵様に離婚を申し込まれたという事かと。」
するとユーゲルスが突然笑い始めた。
「はっはっはっ、何を言い出すかと思えばレイラが出ていっただと、そんな事あるわけないだろう。俺ほどの男はそうそういない。レイラが俺を捨てるなどという血迷った行動をするわけないだろう。」
マスタングがユーゲルスに尋ねた。
「といいますと?」
ユーゲルスがマスタングに言った。
「お前たちがこの私を笑わそうとしてこのような芝居を打ったのであろう?」
すると使用人たちが困惑した様子で言った。
「はっ?」
ユーゲルスがマスタングに言った。
「だがおもしろいネタではなかったな。このユーゲルスを笑わすのは高いレベルが必要だぞ。次はもっとおもしろいネタを用意しておくんだな。」
マスタングが困惑した様子で言った。
「あのう公爵様、我々はそのような事をしておりませんが。」
「だから芝居だとバレておると言っておるだろう。いつまでもつまらん芝居をしとらんではやく仕事に戻れ。」
「ですから公爵様、我々はそのような芝居はしておりません。レイラ様が出ていかれたのは間違いございません。」
するとユーゲルスがマスタング達を大声で怒鳴った。
「ええい!!!くどいぞ貴様ら!!!いつまでも戯言をほざいていないで仕事に戻れ!!」
ユーゲルスの大声で驚いて使用人達は慌てて持ち場に戻っていったのでした。
「はっ!!!」
そして夕食の時間の迎えた。大広間では夕食の準備が一向にすすんでいなかった。
ユーゲルスが怒り心頭で使用人達を怒鳴りつけていた。
「おいレイラを呼べ!!!夕食の支度ができていないぞ?」
マスタングがユーゲルスに言った。
「ですから公爵様レイラ様はこのお屋敷を出ていかれました。」
「まだ言うか、俺ほどの男は他にいない。レイラは俺を捨てるなどという血迷った行動をするわけがないだろう。」
「そんな戯言ほざいてないで、はやくここにレイラを連れてこんか!!!」
ユーゲルスは使用人達にそう命令したが、レイラがこの屋敷にいない以上連れくる事など不可能であった。
ユーゲルスは使用人達を無駄に徘徊させただけで、時間だけが過ぎていった。
「ええい,揃いもそろって役立たず共め。妻一人を連れてくる事もできんのか!!」
マスタングがユーゲルスに言った。
「ですから公爵様、レイラ様はこの屋敷から出ていかれたのです。」
ユーゲルスが一切耳を貸さずにマスタングに言った。
「ええい、もう夕食など要らぬわ!!!このまま寝る!!!」
ユーゲルスはそう言うと寝室へと向かうのだった。
次の日の朝になると公爵邸の前に客人がやってきていた。
ユーゲルスが使用人達に大声で言った。
「おいレイラを呼べ!!!ミルス王女が参られた。流行しているアクセサリーについて教えてほしいそうだ。」
「ですから公爵様、レイラ様はいらっしゃいません。レイラ様はこのお屋敷を出ていかれました。」
ユーゲルスが大声で怒鳴った。
「馬鹿を言うなマスタング!!俺ほど優れた男はそうそういない。レイラが俺を捨てるような血迷った行動をするわけがないだろうが!そんな戯言をほざいてないではやくレイラをはやくここに連れてこんか!!」
また今日も使用人達は無駄に屋敷中を徘徊させられる羽目になった。もちろんレイラを連れてくる事などできなかった。
ユーゲルスが使用人達を大声でどなった。
「ええい、揃いも揃って役立たず共め!!レイラ一人連れてこれんのか!!もうミルス王女は帰られてしまったぞ!!」
「ですから公爵様、何度も申しあげておりますがレイラ様はこのお屋敷を出ていかれました。」
ユーゲルスはマスタングの話には一切耳をかさなかったのでした。
「だからそんな話はせんでいいと言っておるだろうが!!!もうよいわ!!!」
ユーゲルスはそういうと自室へと戻っていった。
次の日の昼間になった。
ユーゲルスが使用人達に大声で命令していた。
「おいレイラを呼べ!!もう出発の時間だぞ。王宮の式典に出席せねばならないのを忘れたか!」
「ですから公爵様、レイラ様はいらっしゃいません。レイラ様はこのお屋敷を出ていかれました。」
「しつこいぞ、マスタング!俺ほど優れた男はそうそういない。レイラが俺を捨てるような血迷った行動をするわけがないだろうが!!いいからはやくレイラを連れてこんか!!!」
また前日同様に使用人達は屋敷の中を無駄に徘徊させられる事になった。
もちろんレイラを連れてくる事などできるはずがなく時間だけが過ぎていった。
ユーゲルスが大声で怒鳴りつける。
「ええい!このままでは式典に遅れてしまうではないか!貴様らはレイラ一人を連れてくる事すらできんのか!!」
「ですから公爵様、レイラ様はいらっしゃいません。レイラ様はこのお屋敷を出ていかれましたのです。」
するとユーゲルスがマスタングに初めてこう尋ねたのでした。
「まさかレイラは本当にこの屋敷にいないのか?」
「3日前からずっとそう申し続けています。」
ユーゲルスが困った様子で言った。
「なんという事だ。レイラが誘拐されてしまうとは!」
マスタングが困った様子で答えた。
「はっ?」
ユーゲルスが大きな声で言った。
「おのれ、卑劣な犯人め。レイラを誘拐するなど絶対に許せん。レイラは必ず取り戻すぞ。」
マスタングが困惑した顔でユーゲルスに言ったのでした。
「あのう公爵様?」
ユーゲルスがマスタングに言った。
「分かっておる。レイラは素性の知れぬ犯人に誘拐されたのであろう?」
「公爵様全然違います。レイラ様はご自身の判断でこの屋敷を出ていかれたのです。それにレイラ様は直接置手紙を置いていかれたではありませんか。」
「それは素性の知れぬ犯人の偽装工作だ。」
ユーゲルスが大声で言った。
「必ず犯人には報いをくれてやる!!!このユーゲルスを怒らせた事を後悔させてやるわ。」
「あのう公爵様?そうお考えになる理由を教えて頂けますでしょうか?」
「簡単な事だ。俺ほど優れた男はそうそういない。レイラが俺を捨てるような血迷った行動をするわけがないだろうが!」
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