(⚪︎⚪︎視点)
私はたかくんと篠原さんの後ろをついて行き、2人がいる踊り場からは死角になっているところに身を隠した。たかくん達の姿は見えないが、声が聞こえるだけで十分である。
(なんの話なんだろう)
帰りのホームルームが終わった途端、篠原さんはたかくんをここに連れて来た。
これは何か怪しい匂いがするということで、誰にも気付かれないようにもう一つのドアからこっそりと抜け出し、2人の後ろをつけてきたのだ。
そうして、2人の会話が始まると私は息を殺し、聞き耳を立てた。
※
「私は今週末にある遠足を休むわ。学級委員である貴方と班の方々に、これ以上迷惑をかけるわけにはいけないもの……」
(そんなことを考えていたなんて……)
私は6時間目の時の印象から、篠原さんのことをもっと冷淡で薄情な人なのだと思っていた。しかし、実際は自分がいると迷惑になると思い、話し合いに参加していなかったのだ。
(そう考えると、『皆さんで“勝手に”決めてください』って言うのも理解できるわ。多分、自分を卑下しての発言なんでしょうけど……伝わりにくいわね)
そして、そんな彼女をたかくんは遠足に来させようと説得しようと頑張っている。
(たかくん、カッコいい。困ってる子のことを見捨てておけないなんて、もっと好きになっちゃう♡ ホント、たかくんはどれだけ私のことを好きにさせたら……)
「篠原さんのことを好きだった僕が保証する」
…………は?
(え、え、どういうこと?た、たかくんは篠原さんのことが好きなの?一目惚れなの?さっき話し始めたばっかりだよね?え、なんで?どこら辺が好きなの?顔立ちが整っているところ?それとも、クール系でちょっとみんなからは浮いてるところ?ねえ、どうして?私だってこんなにたかくんのことが好きなのに?出会ったばっかりていう条件なら私も同じでしょ?なんで?私ならたかくんのして欲しいことならなんでもしてあげるよ?それこそたかくんの綺麗なところから汚いところまでペロペロしてあげられるよ?は!もしかしてそういうこと!そういうことを知ってそうな私よりも純情な篠原さんを汚す方が興奮するってこと?たかくんがそんな性癖の持ち主だったなんて……でも大丈夫!私はどんなたかくんだって愛せる自信があるし、性癖を捻じ曲げる自信だってある!でも、そんなところばっかりを押し出しちゃったら純情好きのたかくんに嫌われちゃう!私があきちゃんだってわざわざ隠してる意味がなくなっちゃう!でも、どうやった純情っぽくなれるんだろう?やっぱり記憶を消すしかない?ダメ!そしたら昔のたかくんとの記憶が消えちゃうかもしれない!それだけは絶対ダメ!それじゃあ、どうすればいいの?やっぱり……)
コツ。
私は階段を降りてくるような音が聞こえたことで現実に戻り、音を立てないよう気をつけつつその場から逃げ去った。
(明日、たかくんを絶対に問い詰めてやる‼︎)
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こんにちは、くりからです。
新しく異世界系の小説を書いてみたので、そちらもぜひご覧ください!
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