三日月夜
はる
アイスを買いに出る
俺と加賀谷は同じ大学に通っており、同じ下宿先だ。なおかつ同じバイト先。図ったわけではない。偶然の腐れ縁というものらしい。バイトが終わると、よく加賀谷はうちに上がりこみ、勝手に冷蔵庫からビールを取り出して飲む。何度注意してもやるから、自然買うビールの本数は増えた。
「せんぱぁい、アイス食べたぁい」
「この呑んだくれが。自分で行ってこい」
「やだやだぁ先輩と一緒がいいんだぁ」
「イヤイヤ期かオマエは。ったく、しょうがねぇなぁ」
重い腰を上げると、ぺとっと机にくっついている加賀谷を持ち上げる。
「ほら立ったたった」
「先輩おんぶして連れてってぇ」
「無理。何キロあると思ってんだ」
「えー、男にしちゃ細身だから大丈夫だよぉ」
「普通に恥ずかしいから無理」
「なんでぇ僕こんなに可愛いのに」
「……そういう問題じゃねぇんだよ」
歩くのを渋る加賀谷をなんとか立たせ、連れ立ってコンビニに行く。途中、ビニール袋を踏んでひっくり返りかけるというハプニングがありつつも、無事一番近場のコンビニまでたどり着いた。白く発光するコンビニを巡り、ラクトアイスを買う。コンビニを出ると、三日月がビルの合間から覗いていた。
「ほら、月、綺麗だぞ」
「え、先輩告白ですかぁ、僕のこと好きだったんならもっと早く言ってくださいよぉ」
なんとなくドキリとして返事を返せなくなった。立ち止まる僕を覗き込んで、加賀谷は何かを察したようだった。
「えっ先輩、マジ……?」
「……いや、今のは単純に、そのままの意味で言った」
「……ですよね! あはは」
なんだこれ。お互いぎこちなく小突き合いをしながら、ビニール袋を下げて帰った。アイスの味は忘れた。
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