ざらつく心 何がどうしたらこうなるんだよ! 俺よ!
俺はビックリとしたが、どうしても手を引っ込めることができないでいた。
社長は俺を見つめもう一度呟いた。
「本当に綺麗だよ」
どう反応すれば良いのか。嫌悪感など無いんだ。決してないんだ。なのにこの感情に流されるのが怖い。あゝ心臓が、心臓が今にも爆発しそだよ。鼓動を激しく打ち付けて来やがるんだ! 苦しいだろよ! 何かに言わないと何かに……何を言えばいい。
「綺麗って社長、俺男です。訳わからないですよ、お、俺……どうすれば……」
その優しい眼差しで見つめられると体は痺れてくるんだ。どうして? 戸惑いを隠せないでいる俺を静かに抱き寄せると社長は、
「落ち着いてほしいなんて。そんなこと言われても困るよね。でもこうやっていても嫌じゃい?」
社長の胸に顔を埋めながら、頷いている俺の背中を静かに擦すりながら、
「良かった、僕は、こうしているだけでも幸せだよ。だからね、恭介くんは焦らないで良く考えてほしいんだ。僕の気持ちを受け入れてくれるまで待つから。いつまでも」
「……そんな、何時までもって言われたって、気持ちなんてどうなるか判らないです。いつまでも待たせたら悪いし」
俺は顔を上げて社長を見つめた。
「さっき言ったでしょ? これが最後の人になるって。だから大切にしたんだ。最初から恋人になれるなんて思っていないよ。僕も男性に対して、こんなに焦がれる気持ちになるなんて初めてなんだ。でもね、この想いを誤魔化すことはできなくて。本当にごめんね、驚いたよね。……じゃあこういうのはどうだろう、友達、いや親戚のお兄さんなんて感じから始めるのは?」
俺は思わず吹き出してしまった。
「もう、何を言い出すのかと思えば。それ無理かな。うん無理です」
「無理って? 駄目って事⁉」
「違います、そうじゃなくて……俺も社長の事気になってます。物凄く。でも、なんか心のそここに訳の分からないゴツゴツしたものがあって、どうしてもそれに引っかかってしまうんです」
「それは、きっと恐怖だよ。でもね、それはふたりなら、絶対に乗り越えられるって思っているよ僕は。それより僕の事気になるって事は、少しはこれからのふたりについて希望を持っても良いってこと? そう理解しても良いの?」
黙って頷く俺を抱き寄せ、社長はそっと唇を重ねてきた。
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