ACT.13 雨の大沼
あらすじ
2台は裏赤城で一進一退のバトルを繰り広げる。
途中、雨が降ってくる。
谷はその状態で怒涛の追い上げを見せ、オオサキは彼女に張りつかれたまま裏赤城を終えて大沼へ向かう。
県道251号線、赤城沼田道路へ入る。
まだ雨は降り続いている。
S15に追われながら、左高速コーナーを抜けていく。
緩い連続S字も抜けていき、まだおれは張りつかれたままだ。
その状態のまま、直線を駆け抜けていく。
「雨はわしの得意分野じゃけん、負けるわけにはいかん」
「なんか、雨が降ってから、後ろのS15が速くなった気がする!?」
相手は雨の方が得意な走り屋だ。
能力もあるのだが、得意なコンディションになったのも大きい。
負けられない
連続S字区間に入る。
途中からサイド・バイ・サイドの状態になり、内側からS15が抜きにかかった。
「さらばじゃ」
同時に氷のように冷たい水色のオーラを纏った。
それは刃のように鋭く変化する。
「梅雨前の緑柱流<氷結の刃>」
刃で刺すように、ワンエイティの前に出ていく。
追い抜かれる際、おれはある部分を見て衝撃が走った。
「このS15、スリックタイヤだ!」
普通、溝がないそのタイヤは雨に弱いはず。
なのにどうしてこの状況でうまく運転できるのだろうか?
「谷輝選手のS15型シルビアには雨と相性が悪いスリックタイヤを履いております。彼女はそのタイヤを履いたクルマの操縦が上手いです」
実況の解説を聞いて、おれは「正気か!?」と考えた。
しかも長時間走っているからタイヤの痛んでいるかもしれないのに……。
すごいや、相手の走り……。
あっちの方こそ雨のドライブが上手い?
また連続S字が来る。
途中で151号線から離れ、細い道へと入る。
その2つの繋ぎ目で無色透明のオーラを発生させrj。
「<コンパクト・メテオ>! イケイケイケイケイケイケイケイケェー!」
覚醒技の力を得た高速ドリフトで谷のS15との距離を縮めていく。
県道157号線との繋ぎ目で、今度は<ハヤテ打ち>を発生させようとした。
しかし!
「何でだ?」
オーラが発生せず、技は発動しなかった。
理由は分からなかった。
青木旅館前のシケインでそれを再び発生させようとしたものの、同じだった。
どうしてだ?
あまり時間が経っていないのに?
後にある事実を知るのだった。
おれは焦っていた。
再び1位になりたいあまり。
このままじゃあ負ける!
技を2連続で失敗したおれは谷との距離が広がる。
S字区間を抜けて、157号線から離れて狭い林道に入る。
右中速コーナーをゼロカウンタードリフトで通過し、その後の2連ヘアピンも同じ走行スタイルでクリアしていく。
「縮めてきたのう……」
林道の終盤でS15に接近した。
「じゃが、勝つんはわしじゃ。わしは負けるんが好きじゃあない」
林道を終えて、県道4号線赤城道路に入る。
キャノンボールはもうすぐクライマックスだ。
「ラストで抜き返して、赤城いや、群馬の走り屋のプライドを見せてやる!」
おれたちが通過したスタート時点。
智姉さんたちが傘をさして、会話していた。
「なんか悪い予感がする……私にはどうすればいいのか分からなくなった」
「なんだ? お前にしては弱気な発言だな」
「マシンの性能も雨での熟練度も相手の方が上だ。しかもバトルは残り少ない。あとは……祈るしかない」
「まだ希望はありますよ!」
「逆転する可能性能を願ったほうがええです!」
「そうだな……」
智姉さんの顔が暗くなってきた。
負けると感じてきたのだろうか?
おれの敗北は智姉さんの敗北だ。
Maebashiを走る、C4を荷台に載せたトラック。
ラジオから速報が流れていた。
ワシはそれを聞いていた。
「今、バトルは大沼を通過しました! トップはS15型シルビアの谷輝選手です!」
「オオサキさん……」
キャノンボールはいよいよ終盤。
天候は雨。
勝利の女神が微笑むのはどっちだ!?
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