第45話 『悪役』と特別グループ

「んで結局、俺含めてユノとシアン姫が特別グループとして作られた……と」

「ん、爪弾き者」

「私達、至極当然な事を言ったと思うのですが……」


 俺たち3人は、訓練場の隅っこで固まっている。ちなみに授業中だ、先生が『じゃあもうお前ら勝手にやってろよ!』とブチ切れて勝手にグループ組まされたあげく放置されて今こうなっている……俺のせいじゃないのに。


 まあ、ユノとシアン姫がああ言ってくれたのは素直に嬉しい。前向きに考えよう……と俺が思考を切り替えているとフルル先生が近付いてきた。


「はぁー、笑わせてもらったよ。まだお腹痛い」

「フルル先生」

「ユノ君もシアン王女様も、熱くなるのは構わないけどもう少し先生という立場を分かってあげてくれないかい?」


 あの先生も分かってはいたけどさ、生徒全員を納得させるためにはタイタン君を下げるしかなかったんだよ、とユノとシアン姫を優しく叱った。


 彼女たちも実は胃痛ポジションにいた先生の実情を知って罰が悪かったのか、うっ……と目をそらして素直に反省する。


「確かに、大人げなかった……かも」

「上に立つ者として、私情を入れてしまったことを反省いたします……」

「君たちの言いたいことも分かるけどね」


 朝の訓練を見ていたら、彼がこの講義でトップじゃ無い理由が分からないよ。とフォローするフルル先生、さすがママだ……理解力カンストしてやがる。


 ですよね!と嬉しそうに言うシアン姫と、横でフンフンと首を縦に振っているユノ。恥ずかしいからやめてくれ……


「とりあえず、だ。剣技の講義でも時間が出来たんだ、死ぬ気で練習するぞ」

「はい!」

「ん」

「実際に死ぬんじゃ無いぞ~?ボクが見ているとはいえ、死んだ人は生き返らされないんだからさ」


 フルル先生に見守られながら俺とユノ、ユノとシアン姫、シアン姫と俺、と組み合わせを話し合って決める。俺は剣技のみ、ユノは投擲無しのハンデを付けることを提案したときはシアン姫にすっごい不満そうな顔をされたが俺たちの練習だと言ったら渋々了承してくれた。


「お前ら、一応確認だが何をすべきか言ってみろ。俺は変わらず剣技の疑似再現と、そこに追加して守りの剣の型の強化だ」

「ん。決定力の強さと投げナイフ以外の隙の作り方」

「えと、私は、うーん……剣技を当てるまでの駆け引き、でしょうか?」


 自信なさげに言ってきたシアン姫に、俺とユノは肯定で返した。そうだ、シアン姫はどうしても……対人やモンスターを想定するなら通常攻撃のバリエーションを増やした方がいいぞ。


 俺がそうアドバイスをしてから始まる模擬戦。しかし、ついに来たか剣技のグループ分け……これはシアンルート、ユノルートどちらにもある共通イベントの開始フラグなんだ。


 学園カグラザカ共通ルート、チャプター1……イベント名は『チームバトル』。


 作中でのイベント概要としては、初日の講義で強さを示した主人公はグループ1としてユノとシアン姫との3人でチームを組む。


 そしてここから1ヶ月毎に12回行われるのグループ同士の3対3のバトル。先鋒、次鋒、大将を自分で決めてセットし、総合的な勝ち数が多い方の勝ち……というシンプルな内容だ。


 グループに勝つ毎にヒロインの好感度が上がっていく1年を通しての美味しいイベント……なのだが。


 うん、主人公ハルトのところにユノもシアン姫もいないね?むしろ俺含めて3人でグループ作っちゃったね?


「ボーッとしてたら、殺れる」

「隙を作れてない時点でボーッとしてても勝てるんだよユノ」

「……ッチ」


 ユノがナイフを振ってきたのをロングソードで後方に受け流す。いかんいかん、これから起こるイベントに気を取られて殺されてちゃ意味ないぞ俺。


 体勢が崩れたユノに反撃しようと俺は振り返ってロングソードを振りかぶる、するとユノは前に流れる身体をそのままに地面に手をついて俺のアゴめがけて蹴りを放ってきた!


 俺は反撃を諦めてユノの蹴りをアゴを逸らして躱す。その間にユノは俺から距離を取ってナイフを再度構えていた。


「パンツ見えてたぞ、はしたない」

「それで隙が出来るなら、苦労はしない」

「死因が『パンツ見たから』は格好つかないな……」

「ユノのパンツ、見てたら蹴り入ったのに」


 もっと過激なパンツを履くべきだった、と謎の反省をしているユノ。いやいや、そんな反省要らないから。


「ユノさーん?次からはスパッツ、履きましょうねぇ?」

「ん、そんなの買うお金の余裕無い」

「それぐらい私が買いますから!私も流石に反省して昨日大急ぎで使いを走らせましたからユノさんも一緒に履きましょう?ねっ!?」


 シアン姫が慌ててユノのスカートを抑えながら顔を赤らめて言ってくる。女の子として当たり前の事を言っているのに、ユノは首を捻るばかりだ。


「過激なパンツ見せたら、彼でも隙が出来るかも」

「女の子としてその考えは終わってますから!もっと恥じらいを持って下さいユノさん!」

「恥じらいで彼は殺せない」


 あくまで全てを武器にしようとしているユノと、流石に下着を見せてでも勝つのには抵抗があるシアン姫。


 うぅ、タイタンさんも何か言ってあげてくださいよぉ……と弱ったシアン姫からヘルプ要請が入る。


 ここでユノに同意したらちょっと上がった好感度がダダ下がりするだろうし、シアン姫の肩を持つか。


「ユノ、シアン姫の言うことを聞いておけ」

「でも……」

「迷走するな、あくまで実力で俺に勝て。二度は通じないぞ」


 ……分かった、とコクリと頷いたユノにホッとする。いや、俺にとっては眼福なんだが……ハルトや周りの男子生徒が遠くからユノのパンチラを見たいが為にちょっとずつこっちに近付いてきてるんだよ。


 さっきまであんなに遠く離れていたのに、まったく男ってヤツは……あっちいけあっち!シッシッ!

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