第16話 『悪役』と足掻き
あああああああああああああああああああああ!憎い憎い憎い憎い!この世界が、この人生が……全てが憎い!
あふれ出る憎悪が止まらない、その矛先は目の前にいるアンデルセン王とシアン姫。
落ち着けタイタン君!弁明をしてこの誤解を解かないと!?そう思うが
「貴様らには分からぬだろう……望まれず生まれた者の苦しみが!」
ダメ!ダメだよタイタン君!相手、王様と王女なの!貴様らとか言ったらそれこそ不敬なの!
「努力しても成果を出せず、親からも見捨てられた子の気持ちなど……分かるはずがない!」
あふれ出る憎悪の言葉、とても自己中心的で……無力感に溢れた言葉。タイタンは結局デバフの魔法の天才であったとしても、必要とされた剣の才能は無かった。
「果報者に全てを奪われる!今度は俺の命か!?俺は何もかも奪われなければならないのか!」
俺はただ、普通に生きていたいだけなのに!そう絶叫するタイタン君。
「……言いたいことはそれだけか?小童」
だが、それは理解者がいないこの場ではなんの意味も無い。剣先を俺に向け、アンデルセン王は冷たくそう放つ。
「なるほど、オニキス家の隠し子という訳か。出自は分かった、だが王家の剣技を知っている理由がまだ分からぬ。それが理解出来ぬ以上、貴様を間者として見ることに変わりは無い!」
アンデルセン王が一瞬で俺の前に現れる!5メートルはあった距離が一瞬で潰された!?『縮地』か!
『縮地』はゲーム中では攻撃力を0.7倍にする代わりに行動順をスキップしてもう一度攻撃出来る技、現実だとこんなにも速いのかよ!
「吹き飛ぶが良い!」
「くっ、《ポイズン》!」
アンデルセン王 の 攻撃!▼
タイタン に 60 の ダメージ!▼
タイタン の 反撃!▼
タイタン の ポイズン!▼
鉄のロングソード は 毒 を 付与された!▼
無骨な直剣 は 毒 に かかった!▼
「がはっ!」
なんとかアンデルセン王の剣を防ぐ事は出来たが勢いまでは殺せずそのまま訓練場の壁に激突する。思わず肺の空気を全て吐き出してしまい、酸欠になった俺は空気を求めて荒い息をついた。
「ふむ……?ポイズンを食らった感触が無い。外れたか?」
「げはッ、がはッ!」
王様に毒かけるとか流石にそれこそ死刑だわ!身体の主導権が俺に移ったのか、なんとか王様にポイズンぶっ放すような馬鹿な真似はせずにすんだが……
いってぇ、背中は壁に打ち付けるし、あの攻撃を受け止めた俺のロングソードは真ん中からへし折れたし。
通常攻撃だけでこんなつえぇのかよアンデルセン王……流石はラスボス。だが、攻略のきっかけは作った。
無骨な直剣 は 57 の ダメージ!▼
ポイズンをアンデルセン王の剣に叩き込んでやったぜ、これでしばらく耐えればアンデルセン王の剣は使えなくなる。
ただこの作戦には1つ問題がある……
「アンデルセン王相手に時間稼ぎかよ……ッ!」
「何をブツブツ言っておるのだ、ワシが聞いてやろうか!?」
「結構です……よッ!」
折れた剣は持ってるだけ無駄なので、アンデルセン王に投げつける。事もなにげに
「ぬっ!させんぞ!」
アンデルセン王が意図に気がついて直ぐに『縮地』の構えに入る……この、タイミング!
俺は思いっきりアンデルセン王とシアン姫の間に足を出す。すると……
「ぅおっ、おおおおおお!?」
「お父様!?」
足を引っかけられて『縮地』の勢いそのままにアンデルセン王は地面を転がる。へっ、お返しだ!
しかし、さっきから憎悪の感情をコントロールするのが難しい。タイタン君の憎しみが半端なくて、気を抜いたら心臓めがけてパラライズを撃ちそうになる。
アンデルセン王に狙いはしづらい、でも今転がっているシアン姫になら簡単に撃てる。
「…………」
「ヒッ!」
シアン姫が短い悲鳴を上げる。ふと見ると無意識に左手がシアン姫に向いていた。ダメダメダメ!普通に生きたいんだろタイタン君!王女殺しは絶対にダメだから!?
「シアンから離れろ小童ぁ!『王剣……!」
「行け!シアン姫バリアー!」
「くっ、卑怯者め!」
うるせぇ、これ以上『王剣発破』撃たれたら死ぬんだよ俺!?しこたま壁に叩き付けられたときに何か身体の骨何本か
俺がシアン姫の元に来た理由。はい、人質作戦です。アンデルセン王を止めるにはシアン姫を使うのがオススメだ。
ゲーム中、アンデルセン王との戦闘では「絶対にシアン姫には攻撃をしない」というルーチンが組まれていて、逆に「主人公には執拗に攻撃を行う」という行動パターンをしていた。
それに気がついたプレイヤーはそれを逆手に取って……アンデルセン王の攻略法として、『シアン姫を肉壁にする』という鬼畜作戦をおもいついたのである!
娘を溺愛しすぎて超過保護なんだから、娘盾にされたら何も出来ないよなぁ!?
どやどやと訓練場に衛兵がなだれ込んでくる。俺はシアン姫を盾にしつつアンデルセン王と衛兵から距離をとった。
あれ?俺今めっちゃ悪役じゃない?でも落ち着いて話をするのにはこうするしかなかったんだから仕方ないよね、うん!
さぁて、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます