第11話 『悪役』と勝利
タイタン君のお陰で仮説は立証された。ここは現実、自身が敵だと思うものにデバフは掛けられる新事実に俺はピンチだというのに……ワクワクしていた。
だってそうだろ?敵と認識すればどんなものだってデバフを掛けられる、今までオークにデバフが掛からなかったのもおそらく。
「ゲーム知識で俺がオークを見ていたからか……」
俺がポイズンを成功させたのはいつだ?オークの攻撃を食らって危機感を覚えた時だ。あの瞬間は確率かと思っていたが、この世界に置いてゲームにおける確率は狙う事が出来る。
自分で言ってたじゃねぇか、回避率やクリティカル率は狙って上げることが出来ると!
どこか俺はまだ、この世界をゲームだと思っていたのかもしれない。何が体力200オーバーのバケモノだ、そんな奴に嬉々として突撃していったのは何を隠そうこの俺じゃ無いか。
「確かに頭の中にこいつの情報はある……だがそれだけだ」
最初のスライム戦の時に自覚したはずだ!ゲームの世界だと認識していた俺の甘い考えを矯正するんじゃ無かったのか!?ゲームの知識はあくまで勝ちやすくなるだけであって勝てるわけじゃないんだろ!
スタミナは限界、MPも残ってない。片手剣に毒を付与は出来たが、この片手剣じゃオークにダメージを与えられない……
「ゲームの中ならなぁ!」
俺は片手剣を中段に構えオークに突進する!オークも二度目は無いと油断も隙も与えず石槍で冷静に俺の片手剣を弾く……かかった!
タイタン の 攻撃!▼
オーク の 石槍 に 0 の ダメージ!▼
オーク の 石槍 は 毒 に なった!▼
ピシリという何かが小さく割れた音、それはオークの石槍から聞こえた。俺は弾かれた勢いそのままにオークから距離を取る。
だがそれを許すまいとオークが石槍を突き出した!
オーク の 攻撃!▼
タイタン に 30 の ダメージ!▼
「ガハッ!」
――ブモォオオッ!
息がッ……!バックステップしていたから勢いは弱まったものの、ダイレクトに石槍くらってしまう。今の攻撃で着ていた防具の留め具が壊れ、地面にガシャンと大きな音を立てながら転がった。
これで後一発……どちらにせよ防具はもう意味が無いから無視だ。必死に空気を求めて喘ぎつつ、今までダメージ軽減してくれた事に感謝する。
だがな……俺はさっきの攻防で得た1つの確信を
「やっぱあんた、デバフ魔法の天才だよタイタン君」
ボキリと突如折れたオークの石槍を見て俺はニヤリと笑った。大ぶりによる攻撃で劣化していった石槍に、さっきの毒攻撃。効き目と効果時間の長さも相まって完全にオークの持っていた石槍にトドメを刺した!
いきなり折れた石槍に今度こそ完全に虚をつかれたオーク。そりゃそうか、今まで持っていた武器がいきなり折れたら誰だってそうなる……
今この瞬間、ここが最後のチャンス!俺は最後のスタミナを使ってオークに駆け寄る。俺に目をそらしているオークは近付いてきていることに気がついていない!
あと5メートル……3メートル……1メートル……ッ!
――――ブモゥ!?
気付かれた……!
「間にッ……合えええええええええ!!」
1メートルを駆け抜けろ俺!足が沼にはまったかのように遅い、息が切れる、極限の状況で無限に引き延ばされる時間がもどかしいッ!
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」
俺は力の限り叫びながら手を伸ばす!だが、すんでの所でオークの槍が俺とオークの間に差し込まれた。
しかし……
タイタン の 攻撃!▼
オーク に 0 の ダメージ!▼
足りない距離は
ダメージは与えられない、だが俺の狙いはその先だ!
「《パラライズ》!」
俺は最後に取った選択肢はダメージを与えられる《ポイズン》ではなく、《パラライズ》。
「俺が敵と認識したのは……お前の心臓だ!オーク!」
――――ブモッ……
《パラライズ》:敵に麻痺を付与する魔法
身体全体では無く、心臓一点特化のパラライズ。今までの遠距離からの放出じゃ狙いは付けられないし、オークの心臓に届かない……だからこそ、0距離からのぶっ放しが必要だった訳だ。
視界が白飛びする。頭が割れるように痛い……今の《パラライズ》でMPを完全に使い果たした感覚がある。もう一歩も動けねぇ。
タイタン の 追撃!▼
タイタン の パラライズ!▼
オークの心臓 は 麻痺 に なった!▼
――――ブ、ブモッ……!
オークはピタッと固まり、次の瞬間うつ伏せに倒れる。びくんびくんと何とか身体を震わせた後……ドロップアイテムをまき散らしながら消えていった。
勝った……勝ったんだ。俺はホッと一息ついた瞬間、止まっていた身体がぐらりと傾く。
気がつけば俺は地面に倒れていた。それもそうか、スタミナ限界まで走って体力はレッドゾーン。MPもガス欠で、さっきから頭が割れそうだ……
「少し、休もう。そう……しよう」
俺は迷いの森の最奥である場所で、気を失った。最後にレベルアップの感覚を身体に感じながら。
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