始まりの章。〜深海の若き冒険者達〜

始まりの章、プロローグ

「行くぞ! おまえら!」

 そう言った彼は、扉を開いた。

 この先に何が待っているのかわからないが、僕らは前へと歩を進める。これまでも沢山の冒険をしてきた僕達だったが、ここから先の冒険もきっと困難な道だろう。

 いつも思う。扉を開く度に、この先で死に果てるかもしれないと。ここには当たり前の日常なんてなかった。いつだって挑戦と成長の日々が続くんだ。

 何? そんなのサラリーマンだってやってるって? ノンノン、ここはそんなちっぽけなレベルじゃないんだよ。

 全力疾走したって届かないような、羽を広げて飛ばないと届かないような。そんなの不可能だろと言われるような事をやってのけなきゃいけなかったんだ。

 僕らだって人間だ。できないことは沢山ある。だからこそ、扉を開く度に思ったんだよ! 次の扉を開いた時、生きて帰れる保証なんて誰も付けてくれなかったからね。

 そして勿論、僕らは一人じゃなかったから、扉を開いた先で誰かを失う可能性もある。君たちだってそうだろ? いつか隣にいる人が亡くなったって不思議じゃないんだ。病気、事故、戦いの果て。何か不幸があれば誰もが誰かを失う世界なんだ。

 だからここでも当然、僕が死ぬ可能性もあって、仲間が死ぬ可能性もあって。その確率が普通より大分高いというだけだ。

 僕らは常に生き残る確率がとてつもなく低い状態で戦わされてきた。でも多分きっと、運命というものはあったんだろう。僕らは出会い集った。

 一度問いかけたことがあるんだ、彼に。何故挑戦を止めないのかと。何故一見無謀にも見えるその奮闘は、あるいは賞賛されるべき時もあれば、決して褒められない無茶な時もある。それでも前へ前へ進む彼は言ったんだ。

 前へ進む思考を止めると俺は人間ではなくなる、とね。

 極端な答えだったが、僕はその言葉に妙に納得いったのを覚えてる。だから僕も歩む思考を止めないんだ。彼の隣を歩む。そのための思考を止めない。

 あなたは、あなたの傍にいる大切な人達と歩むための思考を止めずにいられているかな?

 そうだね。きっと大丈夫。常に何かに脅かされている人間は、きっと強く生きてる。布団に篭って逃げては行けない。立ち上がれ!

 僕も立ち上がろう、前に進もう。思考しよう。

 前置きが長くなったね。さて、扉を開いた彼について行こう。僕らは僕らの魂を賭けて、命を賭して立ち向かう。果てしない冒険が僕らを待っている。

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