第16話 天国か地獄か!?龍星軍のバカンス!!?~後編~(1)




瑞希お兄ちゃんにおんぶしてもらい、旅館の部屋へと戻った私達。


部屋に戻ってすぐ、部屋風呂に入った。


1人にしてもらって浴衣に着替える。





(サーファーのスーツきつかったのよねぇ~)





水にぬれているせいもあって、体にくっつくくっつく!


胸がもげると思った。


中からカギをかけれる、外から開けられないタイプのお風呂で、堂々と温かいシャワーで海水を流す。


そして、見られないように持ち込んださらしと、男性用の下着を身に着ける。


のど仏を隠すため、モニカちゃんが作ってくれたアンダーシャツを上に着て、下には男用(!?)・・・オネェさん手作りの王子ロリータ用のレギンスを着てから浴衣にそでを通した。


濡れたシルキロールの代わりにバンダナを口元に巻く。


浴室から外へ出た。






「お待たせしました、瑞希お兄ちゃん。」


「おう、おそか・・・・なんだその浴衣の着方は!?」


「浴衣の下は、モニカちゃんの作品です。」


「きついだろう!?なんでわざわざ、おぼれて弱ってる時に着る!?」


「え、えーと・・・・身を引き締めようと思いまして~」


「ばかやろー!!」






怒られはしたけど、大目に見てくれた。






「瑞希お兄ちゃんも着替えたんですね?」


「凛が遅いからな。」






そう語る彼は、淡い青色の浴衣姿。


少しゆるい胸元からキレイな鎖骨が見えていた。



セクシー♪






「ほら、肩貸してやるから。」


「は、はい。」


「バンダナも取れ。先生に見てもらう時に邪魔だろう?」






そう言いながら、口元に手をやる好きな人。






「心配しなくても、凛を見てくれる先生は、凛の顔を見て笑わないからな・・・?」



「・・・・・・・・うん。」






覚悟を決めていたのでうなずいた。




(お医者さんに見てもらえば、男女かバレちゃうわけだし・・・・)






「ほどくぞ。」


「うん。」






されるがままに、バンダナが口元から離れた。







(今日で凛道蓮は最後かもしれないけど―――――――)






後悔しない。




(ちゃんと謝って、告白して・・・・あとはどうとなれよ!)







体を密着させ、並んで部屋へと入る。


運命を握る医者のいる場所へ。





「すみません、遅くなりました!シゲ先生。」


「君が蓮君かい?」


「は、はい!はじめまし・・・て・・・」



え?この人が、先生。




浴衣に着替えた4人の先輩といたのは、ラフなスーツを着た男の人。






「はじめまして。山本重治(やまもとしげはる)です。シゲ先生と呼んでくれていいよ。」


「シゲ先生・・・・」






そう言ったのは、メガネをかけたものすごいおじいさんだった。






「凛たん、こちらは業界では有名な山本重治先生だ。」


「あたしたちもお世話になったすっごく良い先生で~あたしへの理解もあるの~」


「くれぐれも粗相をするなよ。無礼は許さん。」


「わはははは!そん時は、俺がブッ飛ばすぜぇ~凛助~!?」


「は・・・・はい・・!」






初代メンバーの言葉と、普段とは違う態度から、どれだけ信用されてるかわかる。


細い身体をしているけど、すごく姿勢がいい。







「凛、シゲ先生は、第二次世界大戦を体験してんだぜ?いろいろ経験豊富で安心だからな?」


「よろしくね。」


「よ、よろしくお願いします・・・!」







こうして旅館の一室で、私と瑞希お兄ちゃん用に用意された部屋での診察が始まった。






何をされるかと思えば・・・・・簡単な問診と、触診・・・・肌に触れられたらバレるんじゃないかと緊張したけど、胸を触られることはなかった。


というよりも、それどころじゃない展開にしてしまった。






「痛いところはあるかね?」


「い、痛いというか~胸は平気です!」


「瑞希は見かけによらず、馬鹿力だぞ?」


「そうよん、凛ちゃん!アバラにひび入ってないかどうかチエックしてもらいなさいよ?」


「俺はそこまでひどく、マッサージしてないぞ馬鹿野郎共!」


「皇助ならありだけどな。肺突き破るぐれーに。」


「わははははは!照れるだろう~!?」


「褒めてないと思いますよ!?いやはや、ホント、助けて頂いたのが瑞希お兄ちゃんですよかっ・・・」


「あら!?あたしじゃいやだった!?」


「俺に不満か?」


「烈司さん傷ついたぞ~?」


「あ、いえ!そういう意味じゃなくて!百鬼さんじゃなくてよかったということで~!肺が破れるとか、怖い思いしなくて~・・・・・・」






そこまで言って思い出す。






(怖い思い・・・・!!)






真っ暗な海の底から伸びてきた手。


海藻やゴミなんかじゃない。


マネキンとか、人形の手でも絶対にない。






「凛?」



(やっぱりあれは・・・・)





「凛、どうした?」


「あ・・・!?」






肩に手を置かれ、ゆさぶられて、我に返る。






「凛、顔が青いぞ!?気分悪いのか?」


「い、いえ・・・ちょっと・・・怖いこと、思い出しまして・・・・」


「「「「「怖いこと!?」」」」」


「なにかあったみたいだね?」






声をそろえる瑞希お兄ちゃん達の側で、紳士的な先生が静かに問いかけてくる。






「なにがあったのかな?」


「その・・・・実は・・・・・・・」






好きな人に優しく聞かれたこともあって、体験した出来事を話す。


女の子の気道を確保しながら岸に戻ろうとしたら、突然片足を引っ張られたこと。


海藻かゴミかと思えば、反対の足も動かなくなり、海面の下を見てみたら・・・・







「きゃああああああああああああ!!いーやぁー!!凛ちゃん、お化けに会ったの!?」


「うるさいぞ、モニカ。」


「だ、大丈夫だったんか、凛!?」


「はい・・・幸い、瑞希お兄ちゃんが追い払ってくれたので、離れてくれました・・・」



(そう、彼が蹴り飛ばして、酸素まで補給してくれたから私は―――――)




「俺が助ける?」


「はい。お化けに蹴りを入れて、酸素呼吸器をつけてくれたじゃないですか?」



「なんだそれ?」


「えっ!!?」






私の言葉に首をかしげる瑞希お兄ちゃん。


気づけば聞き返していた。




「なんだって・・・助けてくれたじゃないですか?」


「人工呼吸はしたぜ?けど・・・・追い払ったのは俺じゃない・・・・」


「う、海に飛び込んだって、ライフセーバーの人も言ってたじゃないですか?」


「ああ、飛び込むには飛び込んだが・・・・・俺が追い付いた時には、凛はもうボートに乗ってた・・・・。」


「え?」


「そんで、ぐったりしてる凛たんを見た瑞希が、おぼれたってパニくやがって、人工呼吸よ。」


「ええ!?」


「れ、烈司っ!!」


「おほほほ!よく覚えてたわよねぇ~高校時代の体育の授業でした時の蘇生方法~?」


「悪いかよ!?」


「わはははは!俺様もできるぞ!!合法にカワイコちゃんとキスできるからなー!!」


「お前の煩悩と瑞希の生真面目を一緒にするな馬鹿者。」


「つ、つーことで!!・・・・俺が助けたんじゃねぇんだけど・・・・」


「そんな・・・・!?」






嘘でしょう・・・





「僕、てっきり瑞希お兄ちゃんだと思って・・・・」






瑞希お兄ちゃんのように感じたのは気のせいだった??






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る