2022年11月17日_リアル宝探し

 ジオキャッシングというものをやってみた。平たく言えばリアル宝探しだ。

 キャッシュコンテナと呼ばれる宝箱は街のいろんなところに眠っている。隠しているのもゲームの参加者。見つけるのも参加者だ。

 準備は少なくていい。スマホにアプリをインストールする。以上。

 あとは街に繰り出して、アプリのマップ上に表示されたピンの位置まで向かい、コンテナを探すのだ。

 なんだか子供の頃に戻ったみたいだと言おうと思ったけれど、そもそも子供の頃に宝探しをしたことはない。探検ごっこならたくさんしたけど。

 ともあれ私はスマホを片手に街へ出た。

 自宅付近にあるピンは二つ。でも片方はちょっと遠い。今日は近い方に一か所行ってみるだけにしよう。

 手始めに近い方のピンへと向かった。なんどか足を運んだことはあるが、ほとんど人の来ない公園だ。ぐるりと見渡す。なるほど確かにコンテナを隠すのに向いている。

 で、どこだろう。

 コンテナの位置はアプリに表示されているのだが、まったく見当もつかない。友人が別の場所で見つけたときコンテナは地面に埋まっていたという。そういう類いだろうかと地面を見つめる。

 掘り返すのか……? ここを……?

 めちゃくちゃに不審だ。公園を掘り返すところを近隣の住人に見られたらなんと言われるだろうか。

 …………。

 私はベンチの裏や東屋の柱の上のほうなどをちらりと探して、その場を後にした。コンテナは見つからなかった。

 く や し い

 初挑戦だったし、こういうのはサッと見つかるもんでもないとは覚悟してたヨ。でも、でもさあ。ビギナーズラックを期待するじゃん。

 行くか、もう一つのピン。

 というわけで離れたほうの隠し場所へ。

 んむむむ、とスマホ片手に探し回る。アプリにはこれまで見つけた人のコメントも載っている。なかにはヒントじみたものも。ネタバレにならない程度のものばかりで助かる。マグられにくい、との表記に焦る。

 マグられるという言葉を説明する前に、ジオキャッシングにおけるマグルという言葉について解説しておこう。

 マグルという単語自体は有名だ。大人気小説『ハリーポッター』において非魔術師の一般人を指す。

 ジオキャッシングにおいてはジオキャッシングをしていない人々のことを指す。差別的な意図からの呼称ではない。単に、マグルの人々にキャッシュコンテナが見つかると撤去されてしまったり、持ちされらてしまったり、捨てられてしまうことがある。

 そういった事態を回避するためにも、マグルには見つかりづらい場所に隠すことはゲームを楽しむために必要だったりする。

 マグられるという言葉は「マグルに見つかってしまう」という意味だ。マグられにくい場所、というのは巧妙に隠されているということになる。

 なるのだが。

 探せど探せど見つからないんじゃ。やっぱ地面を掘り返さないとダメ?

 ああもう諦めるしかないかなあ、と思ったその時。

 見つけた~~~~~~~~~~!

 茶色く塗られたタッパーのようなコンテナだ。木のうろに隠れされていた。しかも道からは見づらい、マグルには見つかりにくい場所にあった。

 開けてみると、中には某Vtuberのラバストやキャラクターのシールなんかが入っていた。コンテナの底にはログシートがあった。ログシートというのはいつ誰が見つけたのかを記入する用紙だ。実際にこれまで見つけた人たちがユーザーネームを書きこんでいる。

 が。

 しまった。筆記用具がない。下調べ不足が響いていた。

 取りあえずアプリにて記録を済ませる。後日なにか入れておこうと思う。

 満足したので帰路につくことに。 

 私は思ったよりずっと満足していた。

 見ず知らずの人たちと時間を超えてすれ違ったような感覚。ゲーム『デスストランディング』に似ていると思った。

 いつかだれかが確かにここにいて、彼らは私と同じようにコンテナを見つけたのだ。そのゆるいつながりが心地いい。

 時を超えて肘タッチしたような気分だった。


 現実の人間関係は場所に縛られ、強い社会性を求められる。

 インターネットでの繋がりはともすれば現実よりも密で、しがらみも増えつつあるように思う。

 そんな時代だからこそ、ゆるく他人と繋がった気分になれる遊びというものは心地よいものなのかもしれない。









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