2022年11月16日_ブドウ糖窒息事件

 ブドウ糖を呑みこもうとしたら窒息しかけた。喉の奥はまだヒリヒリしている。


 お手軽自殺ではない。完全に事故だ。事故っていうか、完全に意味の分からない行動をしていた。


 説明すると。

 時間は二日前にさかのぼる。ご飯を食べているときに唇を噛んだ。そこが口内炎になってしまった。

 いつものことだ。私は噛んだら絶対に口内炎になるタチで、どれだけ緊急手当てしても絶対に口内炎になる。だから対処にも慣れていた。

 口内炎ってやつは死ぬほどイライラさせられるものだけれど、口の中を清潔に保って患部を薬で覆ってしまえば痛みはそれほどなく治りもかなり早い。

 ご飯を食べるたび、飲み物を飲むたびに歯を磨いて軟膏でフタをするのだ。


 で、時間は今さっきに戻る。

 晩ごはんを食べ終えたあと、速やかに歯を磨いて軟膏でフタをした。しかし、しばらく作業をしているとお腹が空いてきた。私は、こんなときは、と卓上のブドウ糖タブレットへと手を伸ばす。重宝しているのだ。お菓子とは違い、脳のエネルギーだけを摂取できるし、安いし、手軽だから。

 私は手を止めた。これ食べたらまた歯を磨かないとダメかな。

 私は思った。面倒だな。

 そこでブドウ糖を諦めていれば平和なままで今日を終えられたのだが、そうはいかなかった。もうちょっと作業がしたかった。


 私の脳は「呑みこめばあんまり口の中も汚れないんじゃね?」と謎の演算をした。どう考えてもブドウ糖の足りていない思考だ。だからこそ食べようとしているわけだが。

 結果として、私は2cm四方のブドウ糖タブレットを丸呑みにした。しようとした。全然無理だった。

 喉が痛くてびっくりして吐き出そうとする。慌てて水を飲む。出そうとする動きといれようとする動きが同時に起こってコンフリクトが起こる。ブドウ糖がなんとか水と接触を果たし、サラサラと溶けていくのを感じる。今だ! とばかりに水を大量に流しこむ。ブドウ糖タブレットは綺麗に溶けて食道へと向かっていった。


 頭にブドウ糖が回っていれば、2cm四方のブドウ糖タブレットを丸呑みできるわけもないと気付けたはずだが、そのブドウ糖が足りていなかったのでは正常な判断は出来ようもない。無理ゲーである。

 これが事件の全容ってわけ。犯人は私で被害者も私だ。

 それは事故って言うんじゃなかろうか?


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