妖精のいるセカイ

曹灰海空

本の『はじめに』

 ――遥か昔或いは何処か。


 今は誰の記憶にも残っていない世界があった。


 その世界の人々は我々の知る科学技術は何一つ持っていなかったという。


 だが、その世界の人々は我々と同様の――あるいはそれ以上に豊かで文明的な生活を送っていたらしい。


 その秘密は彼らが『妖精』と呼ぶ小さな存在にあったのだそうだ。


 これは、そんな世界に生きた人々の他愛もない生活の断片的な記録。


 とある友人が発掘した不思議な本や巻物に書かれていたものを解読し、追体験出来る様再編したものだ。


 まだ上手く訳せた部分は少なく、この本のタイトルもまだ正式には決めていない。


 だから、仮に『妖精がいるセカイ』とでもしておこうか。


 我々で言う機械や道具、生活に必要なエネルギーまでもがすべて妖精という存在ありきで成り立つ世界。


 そんな我々とかけ離れている世界で、我々と同じ様な心を持った住人達の生活の断片。


 その不思議な世界を、少しでも垣間見てみようと思う人にこの書が大きな助けになる事を願って。

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