我が人生のレアケース

すでおに

我が人生のレアケース

「レア‐ケース【rare case】」まれな事例。珍しい事例。 ―goo国語辞書―


 レアケースは、文字通りレアなケースだけに印象に残りやすいそうです。


 私の人生において深く記憶に刻まれたレアケースは2つありまして、いずれも子供の頃の事ですが、子供だったがゆえにインパクトもひとしおでした。


 あれはまだ幼稚園か小学校に入ったばかりの頃、自宅近所のお店でアイスを買ったんです。子供が好むごく一般的な棒に刺さった安価なアイスでした。帰り道で袋を開けたら、持つ方に『あたり』と刻印されていたんです。この世にこんなことが起きるのかと、子供心に、天地がひっくり返ったような衝撃を受けました。親の×××を見てもここまで驚きません。たぶん。


 以前腹話術のいっこく堂さんが「意外と大人より、子供の方が何か仕掛けがあると疑って驚かない」と話していましたが、子供だからこそ驚くこともあって、この時がまさにそれでした。


 あたり棒を記念に取っておこうと思ってから、食べてしまえばどっちがどっちか分からなくなるから無意味なことに気づきました。その後の記憶はありません。店で新しいアイスと交換したのでしょう。後にも先にもな大あたりでした。


 余談ですが、現在赤城乳業のサイトを開くとトップページに『ガリガリ君(70円)当り棒の交換についてのお願い』が掲載されています。

 当たり棒は良く洗って乾燥させラップ等に包んで交換してください、とのことです。「コロナ禍だから当たりは入っていません」とはならないところがさすがガリガリ君。

 それとも数を減らしているのでしょうか。何かと話題の商品の中身を減らした「ステルス値上げ」。「当たり」を減らしても誰にも気づかれませんから、これこそステルスの究極、インビジブル値上げと言えるかもしれません。せめて棒を短くするぐらいにとどめてもらいたいものです。



 もう一つのレアケースは、インパクトはそれほどなのですが、今も忘れることができません。棒事件と前後する時期の、これもアイスにまつわる話です。


 コンビニでおっさんが冷凍ケースの中から取り上げたアイスの袋を開け、食べながらレジに行き、空の袋を渡して会計したんです。

 アイス片手に悠然としたものでした。おそらく四、五十代、私が小さかったせいか妙に大きい男に見えました。


 この時の記憶から、私の子供の頃はそういう時代だった、コンビニで商品を食べながら会計をするのが許される大らかな時代だった、と長らく思い込んでいました。ですがよくよく考えてみれば、こんなことは後にも先にもたった1度しか見たことがありません。

 堂々たる挙動ゆえ、子供の目には当たり前の光景に映ったものの、単なる非常識なおっさんだとだいぶ年を経てから気づきました。思い返せばちょっと危険な匂いのする顔つきだったような気もします。近所ではそういう人と認識されていることでしょう。


 ここから学べることは自信を持つことの大切さ、ではありません。あのおっさんから学ぶことなどありません。というわけでアイスにまつわる当たりと外れのお話でした。

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