39. 砦の建築素材

 獣人族国家の国境砦を見学することで砦と城壁の内部構造がわかった。

 ところどころに照明用の魔導具があったのはどうにもならない。

 錬金術による建築が終わったあと、自分たちでつけてもらうことにしよう。

 さて、そうなってくると問題は砦と城壁を作るための素材になるわけだが……これが足りない。

 大量の石材と木材、接着用の粘土が必要になるため、それらが手に入る場所まで何回も採取に行かなければいけないのだ。

 そこに行く道だって安全なわけじゃないし、ルナも一緒に来てもらう必要がある。

 ルナのマジックバッグにも素材を詰めてもらうが、それでもなお集まりが悪い。

 どうしたものか。


「おや。どうしましたか、庭で悩み込んでいて」


「ん? オパールか。いや、砦の資材が集まらないなと思って」


「まあ、砦ですからね。集めなくちゃいけない資材の量も半端ではないでしょう。どれくらい集まりました?」


「砦本体分は集まった。これから城壁分の素材を集めなくちゃいけない」


「なるほど。それは大変ですねぇ」


「大変なんだよ……」


 本当に大変なんだ。

 毎回、マジックバッグの容量の限界まで素材を詰めて帰ってくるのに、2週間かけて砦本体分しか集まっていない。

 城壁分も集めるとなると冬の間で集まるかどうか。


「それで、悩んでいましたが、なにかいい案でも浮かびましたか?」


「浮かばないな。マジックバッグの中にマジックバッグをしまうことも出来ないし、素材を持ち運ぶために量産したマジックバッグに傷をつけて壊れても困る。一回の採取で持ち帰ることが出来る素材の量を増やす方法なんて思いつかないや」


「ふむ。それでは少しばかり知恵を貸しましょう」


「オパールがこういうときに知恵を貸してくれるだなんて珍しいな」


「ルナちゃんも疲れているみたいですからね。少しでも楽になる方法を教えてあげましょう」


 少しでも楽になる方法か。

 それはありがたいな。


「アークはどこまで素材を採取に行っていますか?」


「どこまでって、結界の外にある岩場だけど?」


「そこまでいく必要がありますか? 結界内は妖精たちが好き勝手に環境を整えることが出来るのに?」


「それは……あ」


「そういうことです。わかったのでしたら、早く行動してください」


「助かった。ありがとう、オパール」


「いえいえ。それでは、夕食までには帰ってきてくださいね」


 そうだよ、結界内は妖精たちが自由に環境を整えることが出来るんだった。

 だったら、岩や木材、粘土が採れる環境を妖精たちにお願いして作ってもらえばいいんだ。

 こんな簡単な事すら忘れていただなんて相当焦っていたんだな。

 ともかく、妖精たちを捕まえて相談しないと。


 妖精たちと相談した結果、家から3時間ほどのところに採取場所を作ってもらうことが出来た。

 これなら1日に数回訪れることが出来るし、モンスターも強いものがいないから安全だ。

 どうしてこんな簡単な事に気付かなかったのか。

 はあ、ともかく素材を集めきらないと。

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