20. ルナの新装備

 ほのかに金色の混じった朱色。

 ルナにぴったりの手甲ができた。

 形も想像していたものとばっちり一緒だし、完璧だ。


『それが新しいあたしの手甲? 見たい見たい!』


『まあ、待って。その前に神様へ追加のお供えだ』


 出来がよかったときは神様に追加でお供えするのも我が家の伝統。

 本当はいらないらしいけれど、神様との縁は大事にしたい。

 米酒をグラスに追加で注いだら、注ぎ終わると同時に光って消えてしまった。

 お酒好きな神様だ。


『さて、もう触ってもいいぞ』


『うん! あれ? 見た目よりも軽い』


『そういう付与効果を付けておいたからな。実際の重量はそのまま、身につけていたり持っているときだけ軽くなる。そういう手甲だ。モンスターの攻撃を受け止めても吹き飛ばされたりしないぞ』


『本当!? でも、この手甲って爪がついていないね』


『爪を出したいと願えば出てくるぞ』


『え? うわ、本当だ! すごい!!』


 ルナは手甲を掲げ、爪を何度も出し入れさせて楽しみ始めた。

 楽しんでくれるのはいいんだが、他の機能も説明しないとな。


『ルナ。その手甲はいろいろと仕掛けを仕込んである。楽しいのはわかったからその説明を先に聞いてくれ』


『あ、うん。ごめんなさい』


『いや、謝られる程のことでもないんだけど。ともかく、仕掛けの説明だ。まずは手甲を握り絞めてなにか魔法属性の爪を出したいと考えてみてくれ』


『魔法の爪? ええと、それじゃあ、火の爪!』


 ルナが手甲を掲げたまま叫ぶと、右手の手甲の先から火の爪が3本飛び出してきた。

 元から出しっぱなしになっていた4本の爪から見て合間から出現してがっちりとくわえ込むような形となっている。

 これにはルナも驚いたみたいだ。


『ふわっ!? これなに、アーク!?』


『仕掛けその一、魔法の爪だ。ルナが念じれば普通の爪と挟み込むようにして3本の爪が飛び出す仕組みになっている。基本五属性すべてを出せるようにしてあるから、状況に応じて使い分けてくれ』


『基本五属性って、火と水と……』


『風と土、それから雷な』


『うん、覚えた!』


 本当かな?

 あとでそれぞれの属性爪の効果と一緒に教えておこう。

 それよりも次の仕掛けについて説明しないと。


『次の仕掛けだけど、ルナ、爪を上に向けたまま〝一番発射〟って言ってみてくれ』


『うん? えっと〝一番発射〟!』


 ルナはよくわかっていない様子だったけれど、僕の言葉通り爪を天井に向けてキーワードを発してくれた。

 すると爪の中から1個の小さな石が飛び出て天井に当たり、落っこちてくる。

 落ちてきた石はルナがつかみ取ったな。


『あれ? 石が飛び出す仕掛け?』


『いまは石ころしか装填していないから石が飛び出す仕掛けだけど、本来は錬金術アイテムとか矢とかをしまっておいて発射する仕掛けなんだ。矢を打ち出すには専用の装置がいるからまだ発射できないけどさ』


『錬金術アイテム……あたしも爆弾とかを投げられるようになるの!?』


『各種爆弾も装填できるけれど、間違って至近距離で爆発させたら自分も巻き込むぞ?』


『そこは気を付ける!』


『大丈夫かなぁ? まあ、次だ。その手甲を盾として前方で構えてみてくれ』


『こう? あ、向こう側が透けて見える!』


『盾として使っている間はルナの方からだけ手甲の先が見えるようにしておいた。これでガードもやりやすくなるだろう』


『うん! いろいろ考えてくれてありがとう!』


『どういたしまして。最後は盾の先端部分にも魔法の爪を作ることが出来るって仕掛けだ』


『ふむふむ。こうかな? あ、できた!』


『おめでとう。それを使って後ろの敵とかを突き刺すとかいろいろ考えてみてくれ』


『うわぁ、出来ることがたくさん増えた! 本当にありがとうね、アーク!』


 ルナは僕にお礼を言うとソワソワし始めた。

 ああ、新しい爪を試してみたいのか。


『ルナ、その爪、もう持っていっていいぞ。ただし、モンスターのいるところまで行くなよ』


『うん! これを使って型の練習をしてくるね!』


 ルナは爪を身につけたまま勢いよくアトリエを飛び出していってしまった。

 本当にモンスターのいるところまで行かないだろうな?


「心配だけど、ルナは約束を守るタイプだし信じようか。とりあえず残りの装備も作らないとな」


 僕は再び金属や布、宝石などを取り出して各種装備を仕上げていく。

 鎧は全身を固めているのに動きやすくなるようにデザインし、肩や肘、膝、かかと、つま先からも魔法の爪が飛び出すように設計した。

 兜代わりに作ったティアラはある魔法効果と一緒に頭全体を保護するベールも取り付けてある。

 ベールがなくても魔力で保護されているから問題ないんだけどね。

 次に、鎧の下に着る服として何着か服も用意した。

 鎧との摩擦で肌が切れないように、そして鎧の隙間から攻撃が入り込んでもある程度はガードできるように金属糸で編まれた布で作ってある。

 多少重くなっているが、重量軽減もかけたしルナなら大丈夫だろう。

 あと、ルナ用にアクセサリーも作った。

 アメシストのイヤリングとアクアマリンのチョーカーだ。

 これにもティアラと同じ仕掛けを施しておき、なにかあったときでも大丈夫なようにしておく。

 これでルナの装備は武器以外僕と同品質になったからなにかあっても安全だろう。

 武器だけは素材がちょっと手に入らないからなぁ……。

 武器まで同じ素材にするなら少しずつパワーアップしていくしかないから、ねぇ。

 そこだけは我慢してもらおう。

 ルナの装備作りで1日費やしたけど、夜にルナに渡したときすごく喜んでくれたし、やり甲斐のある一日だったかな。

 寝るときにルナがベタベタにひっついてくるのはなんとかしてほしかったけど。

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