”漆黒”と言われる少年、敵である少女を助ける。

隴前

第1話 推し

 俺は黒羽くろば逃彩にいろ。学校の席でヘッドホンで推しの声を聴きながらぽぇ~と呆けていた。何も考えなくて済むのは結構幸せな時間だと言えるのでは?

 しかしそんな幸せな時間はすぐに去ることになった。


「岡田、昨日のMOEのライブどうだった?」

「まじ最高!!行っただけで価値ある!」


 MOEというのは覆面の歌い手のことであり、最近少しづつメディアでも取り上げられるようになってきた。初の投稿した曲は三年前であり、そしてまれに雑談配信をしている。

 陽キャどもうるせい。MOEへの思いはわかるがもう少し静かにせい。本人がいるだろうが。

 俺は横の横の席の人を見る。

白神しらかみ細華さいかである。正体はもちろんMOEのことである。

 しかし白神さんは寝ていた。ふりかもしれないが。


「MOEの仮面の下ってきっとかわいいんだろうな~」

「仮面だからブスだよ」

「むむ、MOEはブスじゃないよ」

 

 陽キャどもが集団で言っていやがる。あぁ!イライラする。

本人は配信で『仮面の下はどっちでもないよ』と言っていた。つまりこの陽キャどもはにわかであるに違いない。

 

「おいおい、そんなぐらいにしとけよ」


 女子二人が言い合っているととある男子が制す。速水はやみずはやとだ。このクラスのイケメンand陽キャである。


「MOEは配信でしっかり『仮面の下はどっちでもないよ』と言っていたんだ

、だからそんなことに言い合ってないで今日カラオケに行こう」


 もしかして速水はMOEのファンなのか?そんなことを考えるが結局わからない。本人に聞くのが一番だが俺はなんたって速水とは一度も話したことはないため、気まずい。

 一旦諦めて、ヘッドホンの音量を大きくしてMOEの歌声を聞くことにした。


その後、普段よりも音量がでかすぎて、チャイムが鳴っていたことに気付かず無事先生から注意を受けることは知らなかった。


「...このようにして、ヒーローとヴィランの関係ができていきました」


 授業はもちろん、ヒーローとヴィランについてだ。

この世界にはヒーローとヴィランが存在している。人類の脅威になっているヴィランを倒そうとしているのはヒーローと説明している。

 まぁ違うが。

それは人類側が良いように偽の情報を流しているだけにすぎない。


「黒羽君、最近ヒーローで一番強いと言われているのは?」


 思索ふけっていると狙ったかのように俺に質問をぶつけてくる。

少し間を開けて言う。こんな問題は知って当たり前だからな。


「”天使”ことミカール様です」

「そうです、二つ名も知ってかりと覚えていますね」


 俺はこうやって荒波を立てない学校生活を送っている。


 


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