第36話 ゲームセンター①

 ゲームセンターへと2人で入る。

 中は平日ないかそこまで混んでいなくて、クレーンゲームとかも自由にできそうだった。


「どれからします?」

「そうだなぁ……あっ」

「どうしました?」

「いやぁ、なんでも」

「あれですか?」


 綾芽は俺の視線の先をしっかり捉えていたらしい。別にいいという俺の言葉を無視して、ずんずん進んでいく。


「好きなんですか? このキャラクター」


 綾芽が指さしたのは、俺が前世でよく見ていたアニメのヒロインのフィギュア。こっちの世界にもあったんだな、というのは置いといて。

 心なしか綾芽に似ている気がするし、そもそもあんまりオタバレしたくなかったんだけど。


「いや、まぁ。好き、と言えば好きかな」

「そうですか。では、一回やってみても?」

「いいの?」

「はい……あの、今から言うこと、恥ずかしいので耳寄せてくれますか?」

「え、うん」


 距離が近くなって、心臓が音を立てる。でも綾芽、今からいうことの方が距離を縮めるより恥ずかしいんだな……


「実を言うと、私、男の子とゲームセンターでクレーンゲームするのが夢で、こそこそ遊んでたんです。なので、腕はかなりのものですよ」


 綾芽は少し恥ずかしそうに笑って、腕をまくった。おお、急に頼もしく見える。


「そうだったんだ。じゃあ、お願いします」

「はい! あのフィギュアですよね?」

「うん。俺の好きなアニメのキャラなんだよね」

「可愛いですもんね。では、いきますよ?」


 綾芽は少しずつアームを動かし、フィギュアにたどり着いた。少し外れてるところだけど……


「狙い通りいけました。これは絶対に取れますね」

「そうなの!? ごめん、ちょっと外れてるから失敗かと思ってた」

「違いますよ~見ててください」


 そう言った瞬間アームが動き、フィギュアは無事取り出し口へと落ちていった。


「マジで落ちた……」

「ふふん。やっぱり落ちましたね。今日は調子がいいみたいです」


 綾芽がドヤ顔をする。ゲームでは見れなかった新鮮な表情だ。可愛いな。


「はい、どうぞ」

「ありがとう。おおっ、フィギュアだ。すげぇ」

「嬉しそうですね。その顔を見れるだけで私も嬉しいです。なんせ、友達ですからね」


 本当に綾芽は嬉しそうに笑っている。いい子だなぁ。


「次はどれにしましょうか」

「花野井さんが欲しいのは? 俺、ちょっとやってみる」

「いいんですか!? えっと、あれです」


 指さしたのは、ふわふわしたぬいぐるみのマスコットだった。可愛らしく、そしていかにも女の子が好きそうなものだ。


「やってみるよ」

 

 俺は綾芽と一緒にそのクレーンゲームへと歩いた。あぁ、どうしよう。綾芽と遊ぶの、思った以上に楽しすぎる。

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