第15話 凪月との出会い
昼休み、いつもと同じように成田と階段でお弁当を食べているときだった――
「お2人さんちょっとごめんね! しばらく隠れさせて!」
茶髪のポニーテールをなびかせ、凪月が突然やってきた。
しばらくしてから教師が彼女の名前を呼ぶ声がしてきたが、すぐに過ぎていく。
「おっ? 行ったかな……うん。行ったね。もう大丈夫」
凪月は階段から廊下を覗き込み、また俺たちの方に戻ってきた。いきなりなんだろ。
「いやぁ。ごめんね。あたし、朝比奈 凪月っていうんだけどさ、先生に今追いかけ回されてて。昼休みの間だけ居させて! ね、お願い!」
パチン、と目の前で手を合わせる。
「別にいいけど、なんかやらかしたのか?」
成田が聞くと、凪月は照れくさそうに笑った。
「実力テストで全教科0点取っちゃてさ。補習かかっちゃったんだよね」
「で、サボってると」
「あ、いや、サボってるわけじゃないよ。今日の分はちゃんとやりました」
手を振る凪月。
そうだ。原作でもこんな感じだった。あまり頭は良くない……というか完全なる馬鹿だけど、運動神経抜群で、所属している陸上部では1年生のこの時期にして既に次期エース候補としての噂が。先生の魔の手から走りで何度も逃れていたが、最終的には中間テストでも最下位を取ったことで、主人公に勉強を教わるようになる。そして、そうやって2人きりで勉強するうち、2人の間に恋愛感情が生まれていく――
「じゃあなんで?」
「補習はたしかにちゃんとやったんだよね。だけど、その後の再テストでまた0点取っちゃって。そっからもう先生カンカンでさ。こうやって追いかけられてんの」
「追いかけられたってことは、逃げてたってことか」
成田が呆れたように言う。
「だ、だってぇ。だいぶ怒ってたんだもん」
「それあとでもっと怒られんぞ」
「それは分かってるけどさぁ。ちなみに、隣の人はどう思う?」
隣の人、と言われてはっと気づいた。そうか、俺のことか。
「戻った方がいいんじゃないかな」
どっちみち、補習になるわけだし。原作で実力テスト時点でどうしていたのかは分からないけど、たぶん教師に見つかって連れ戻されていたんだろう。
「えー。まぁでもそっか。戻るかぁ」
「まっ。俺も多少勉強したら学年ほぼ最下位から半分くらいになったから」
「補習、頑張れよ」
「ありがと」
声をかけると、凪月は頷き、走って戻っていった。って、早すぎだろ。
「すっげぇ足早いな」
「それな」
まるで嵐みたいだった。
でも良かった。絶対今の感じモブだし。そりゃ、涙が出てくるくらい、凪月とは関わりたかったけどさ!
これから関わることも、たぶんないだろうな。
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