第10話 美少女と2人きり
まさかの神奈からの電話か……何で俺のLIMEのアカウント知ってるんだろう。
「どうしたの?」
「ごめんね。道、迷っちゃって……今錦小路くんたちってどこにいるの? あっ、ちなみにLIMEは、うちの学年、中学のときは学年LIMEあったじゃん。そこでアカウント見つけてかけたの」
「あぁ、うん。いや、それはいいんだけど……ごめん。俺も迷ってるんだよね」
「えっ、ほんと?」
「うん」
なるほどな。錦小路、そんなLIMEグループに入ってたんだ。てか、学年でグループ作るなんてなかなかすごいことしてたんだな。後で確認しとこ。
「どうしよっか。できれば錦小路くんのとこ行きたいんだけど、場所分からなくて。ほんとごめんね」
「何で謝るんだよ。迷ったのは俺も同じだし」
「でも……」
「そういえばさ、近くに自販機とかある?」
「えっ、自販機?」
「そうそう。あったらいいんだけど……」
電話から歩く音がしてくる。
「あっ、あった」
「良かった。じゃあさ、そこに住所書いてあるはずだから、探してみて」
「う、うん。住所、見つけた」
「それ、教えてくれたら俺すぐそっち行くよ。ここ人多くてさ、たぶんそっちはあんまり人いないよね?」
「うん。いない。でもいいの? こっちに来てもらって。申し訳ないよ。ここけっこう遠いもん」
「いいから。じゃ、とりあえず切るな」
「うん。ありがとう」
急なアクシデントだからか、神奈の声は思ったより落ち込んでいた。
張り切ってたもんなー。準備だって念入りにしてたみたいだし、余計に責任を感じてるのかもしれない。
たしかに迷ったら班の人に迷惑かけるから、俺もさっきまで罪悪感で死にそうだったんだけどさ……
「で、神奈がいる場所か」
スマホの地図に住所を入力する。
しばらくしてから表示されたそこを目指して歩く。
15分ほど歩けば、都会とは少し外れた人通りのない道に出た。その中に、人並外れた美少女を見つける。
「あっ、佐々木!」
「錦小路くん!」
「いや、見つけられてよかった」
「そうだね……でもどうしよう。山田さんと木戸くんには会えてないし……」
「そうなんだよな。2人は高校からだから連絡先も知らないし。交換しとけばよかった」
「ごめんね。わたしも連絡先知らないの」
「いや、知らないのは俺もだから……それよりどうしようか。先生たちのいる本部まで行けば連絡取ってもらえるかな」
「そっか! そうだね。そうしよう! そんなこと思いつくなんて錦小路くん賢いね」
「いや、別にそんなことは……」
前世でこんな美少女との会話の機会なんてなかったから何話したらいいか分からない。さっきは他の人もいたからな。まだ会話が成り立ったけどさ、ほんと今はもう2人きりだし。ゲームでさんざん会話したとはいえあれは選択肢だったし……
「錦小路くん、どうしたの?」
「あっ、いや。何でもない。それより早く本部行こうか」
少し緊張しながら、神奈と2人、本部の場所を目指す。
「んー、次の角右だって」
「分かった」
頷いて、角を曲がった瞬間だった。パラパラ、と右手に冷たい感触。嫌な予感がする。
「傘持ってる?」
「俺持ってない」
「わたしもなんだよね」
「天気予報晴れだったからなぁ」
最初は細かく降っていただけのそれが、だんだん本降りになってきた。いつの間にかザァァァァ、という音までしている。
「これ、ヤバくね?」
「ヤバい、かも」
「どっか雨宿りできる場所あるかな」
「あっ、あそこいけるんじゃない?」
神奈が指さしたのは、バス停だ。運のいいことに屋根付きのタイプ。
「よし、そこ行こう。走る?」
「うん!」
2人で走って、何とかバス停まで辿り着いた。でもその一瞬で、全身ビチャビチャだ。
「これ、帰りどうしよう」
「そうだよな。その問題が……」
俺は神奈の方を見て、すぐ目を逸らした。
神奈が上に着ていたのは、制服のシャツだけ。で、さっきは大雨の中を走り抜けてきたわけだ。
要するに。
透けてるんだよなぁ。水色の下着が。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます