ー出会いー12

 その春の笑顔に一瞬動きを止めてしまうゴー。 まだ言えないけど、実はゴーは春の笑顔が好きだ。 きっと男からそんなことを言われたらきっと気持ち悪いと思う。 だからそのことは隠し再び春の手首を取ると、今さっき送ってもらったマネージャーの車へと急ぐのだ。


 マネージャーの車に乗り込むとゴーは助手席に乗るのだが、今日は春の腕を引き後部座席へと座る。


 やはり人気がある歌手なのであろう。 車にはスモークが貼ってあった。 きっと外からは中の様子は見にくいが車からは多少は外の様子が見えるようになっているのだから。


 街中を歩く人々。 明るいネオン。 東京という街は本当に二十四時間眠らない街だ。 春が育った街は夜になると静かで街灯がチラホラとついている程度。 夜道を歩くのは危険だが夜には星が綺麗に見える。


 そういう時こそ地球に生まれて来て良かったと思う。


 都会での暮らしは確かに大変だけど田舎暮らしでは味わえない物がある。


 春はそんな街中を車の中から眺めるのだった。


「ね、春さん! 何処に行くんですか?」

「……へ?」


 ボッーと外を眺めていたら、いきなり隣に居るゴーに声を掛けられる。


「だから、クスクスー、春さんって案外、真面目そうに見えて何処か抜けてますよね? 今日は春さんのお勧めの場所に行くんでしょ? 場所が分からないとその場所に行けませんよ」

「あー、あー」


 そうだ。 本当に今日の春は抜けていると自覚しているのかもしれない。


 春はゴーのマネージャーに行き先を告げると再びイスへと寄り掛かるのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る