幼馴染の美少女と普通に交際してるだけの僕のお話。 しばらく疎遠になっていた幼馴染と再びヨリを戻して付き合い始めた中学生バカップルの甘々日誌!

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第1話 裏山での告白


 ・登場人物


 ●城山 峻也 (しろやま しゅんや)

 主人公。栞の彼氏。


 ●黒崎 栞 (くろさき しおり)

 ヒロイン。峻也の彼女。幼馴染。美少女。


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「栞……。僕と付き合ってみない?」


「うん」


 僕は栞の両肩を軽く抑えると、彼女にキスをした。






 もう、夏休みも目前に迫った七月のある日のこと。

 中学二年になる僕、城山峻也(しろやま しゅんや)は校舎の玄関に向かっていた。


 その日はテスト一週間前で部活は無かったのだか、担任の先生に頼まれた所用を手伝っていた為にクラスのみんなより帰りが少し遅くなった。

 校舎にはもう、誰も残っていない。

 玄関の靴箱で手早く靴を履き替え、校庭に出ようとした時だった。

 隣からひょこっと一人の少女が現れた。


 黒崎栞(くろさき しおり)。

 長くクセのない艶やかな黒髪が印象的な彼女は、実は僕の幼馴染だったりする。

 小学校の頃からみるみる可愛くなって、気づけば学校で一番の美少女になっていた。

 今年、僕と栞は幼稚園時代から数えて六回目になる同じクラスになった。

 栞とは男女の分別も付かないくらいに幼い頃は二人でよく遊んでいたのだが、ここ何年かは少し疎遠になっていた。


 とは言え、会えば会話くらいはする。


「あれ? 栞も今、帰り?」


 栞は身を屈めて靴ひもを結んでいた。


「うん。テスト期間で部活停止なの忘れてて、楽器出して音楽室行ったら誰もいなかったんだよ……。他の部員と全くすれ違わなかったから、おかしいと思ってたんだけどね……。峻也も?」


「いや。僕は先生に用事を頼まれたから遅れただけ」


「ふぅ~ん……」


 そんな会話をしている間に、栞も靴ひもを結べたようだ。

 床のタイルをトントンと蹴って脚を靴に入れる。

 そして、すのこの上に置いていたカバンを持ち上げた。

 あの通学カバンは見た目より重い。

 半袖から伸びた細い腕でよく持ち上がるものだ。


 ふと……、何かが僕を突き動かした。


「一緒に帰るか……」


「うん……? ふふっ」


 栞は少し驚いたような表情を見せた後、小さく笑う。

 僕はおよそ四年半ぶりに、栞と並んで帰途に就いた。


 僕は栞が好きだ。

 僕が始めて彼女を意識したのは小学校の頃だろうか。

 周囲からひやかされ、栞と疎遠になってから気づいた。

 僕は栞が好きなんだ。

 栞との結婚を僕は何度も妄想した。

 そして、中学二年になってしまった。

 同じ教室にいつもいるのに、話だってできるのに、みんなの前では他人として振舞う。


 さらに最近は、男子の中でも栞のことが噂になるようになってしまった。

 僕はクラスメイトのとある男子生徒の言葉が忘れられない。

「俺……、黒崎とヤッてみたい。あのデカいおっぱいたまんねぇだろうよ?」


 そんな、鬱屈した気持ちを抱えたまましばらく過ごし、僕は栞と話す機会が欲しいと思い始めていた。

 できれば、二人しかいない状況で……。


 二人で話す機会くらいいくらでもあると思っていたが、いつの間にか三週間が経過した。

 思ったよりも僕は栞と疎遠になっていたのだ。

 そして今日、僕は栞と二人きりになる機会を得た。

 これを逃せば、次はいつになるか分からない。

 そんな焦りが僕をせき立てたのかもしれない。


「栞……。ちょっと、山、登ってみないか?」


 校門をを出たところで、僕は学校の裏山を指さした。


「いいよ?」


 標高は50mもない。

 二十分もあったら頂上の公園に着く。


 夏の山登りは流石に暑かった。

 栞も汗をかいている。

 だが、頬に張り付いた黒髪が色っぽくも見えた。

 水筒の茶を一口含み、ベンチに腰掛ける。

 平日の昼下がりだが、僕たちの他に誰も居なかった。


「何で急にこんなところに登ってきたの? しかもテスト期間に?」


「……突然の思い付き?」


「プッ……、アハハ……」


「栞のことだからどうせ家帰っても勉強なんてしないだろ?」


「え~。うるさい~」


「…………」


「…………」


 小高い山から見下ろせば、僕らの生まれた町はミニチュアの様に見える。

 高いところから見下ろすと、ここから海岸まで結構近そうにも見えるが、実際に歩くと時間がかかることも知っている。

 駅では電車が二本、ちょうどすれ違っているところだった。


 ふわりと、海から風が吹いた。

 隣に腰掛ける栞から花のような甘い香りがする。

 シャンプーか、柔軟剤か……。


 僕は、言いたくて言いたくて、このところずっとウズウズしていた言葉を口にした。


「栞……。僕と付き合ってみない?」


 さて、栞がどんな返答をするか。

 保留でも十分構わないくらいだが。


「うん」


 即答だった。


「彼女になってくれるってこと?」


「何で峻也が訊き返してるの?」


 栞が僕に向かって両手を広げ、胸を張る。

 同世代の中でも発育の良い大きな双丘が制服の胸元を押し上げる。


 僕は栞の両肩を軽く抑えると、彼女にキスをした。


 柔らかい唇。

 こそばゆい互いの鼻息。


 キスをする前より、栞の唇に触れたことを自覚した途端、心拍数が尋常でない程上がりだした。

 汗が先ほどよりもさらに噴出してくる。

 僕も栞も、身体を震わせていた。


 無言で見つめ合ったまま、数分が経過した。


「帰ろう……。汗かいてきた」


「うん……」


「栞……」


「ん?」


「明日の土曜、空いてる?」


「うん」


「図書館で一緒に勉強しよう」


「うん……。わかった」





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「ただいま~」


「おかえり、栞。汗だくじゃない? 今日は暑かったものね……」


「うん」


「先にお風呂入って来ちゃいなさい」


「うん…………。お母さん……」


「なぁに?」


「私、峻也と付き合うことになった」


「……峻也君? あの、城山さんのところの?」


「…………うん」


「そう…………、良かったわね?」


「うんっ!」





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