第4話
博物館に併設されたカフェテリアでハルキとニッタは遅い昼食をとっていた。
「ミイラが動くなんて作り話もいいところだろ」
全くやる気のないハルキはニッタに言う。
「でも館長は本気みたいっすよ」
「お前、何のためにここに来てると思ってんだよ。動くミイラなんかいるわけねえだろ。千年以上動いてないミイラが動き始めただ? 千年寝てたのかよ、ミイラ」
「いや、そのミイラは動いてるんじゃなくて誰かに取り憑いてるって話みたいっすよ」
「はあ? 取り憑いてる? なんだそれ? ほんとにそうなら俺たちの仕事になるけどよ」
「いや、よくわからないんすけどね。ここのミイラっておかしいんっすよ。そもそも発見された時ミイラが海の底にあった、しかもそれが千年以上前に海から浮かび上がってきた島から発見されたって。それってつまりこのミイラ自体がなんらかの遺物って事じゃないんですかね? だから博物館がその辺の経緯を隠してるとか?」
「なるほどな。それで館長は事が大きくなりすぎて焦りまくってんのか、俺たちがそれを暴いちゃうとここに置けなくなっちまうしな」
「そゆことっす」
「うーん。どうすっかなあ、このまま夜に忍び込むか、あっさりイレイサー名乗って館長に話聞くか。ニッタ、どうするよ?」
「それはハルキさんが決めないとでしょ? イレイサーはハルキさんなんっすから」
「めんどくせえな。まあとりあえずそのミイラを一回見とくか。んで、お前、なんでそんな恰好してんの?」
ニッタは全身茶色のスーツに身を包み、帽子を目深に被っていた。
ハルキは紺のスーツを着ていたのだが、ニッタと違い、ネクタイの代わりにスカーフを巻き、薄いサングラスを掛け、黒い手袋をはめている。
「いいじゃないっすか、遠出した時くらいいつもと違う格好したいじゃないっすか。そういうハルキさんはどこ行くときも変わんないっすよねえ、たまにはオシャレしたほうがいいっすよ、もう三十代後半なんすから。いつまでも独り身だと……」
「うるせえよ。いいんだよ俺は」
そういうとコーヒーを飲み干し、立ち上がり、ニッタの頭を軽く小突くと二人は一旦宿に戻り、夜中、博物館に向かった。
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