第25話
【NEON】から帰り、風花と別れたあと、俺とシーナは夕飯までお互いの部屋でのんびり過ごすことになった。
シーナはかなりダメージを受けていたようだし、きっと俺よりも疲れは溜まっているはずだ。
それに、あまり口には出さないが、シーナにとってここは慣れない土地。ニートのような生活をしていても気付かぬうちに疲れは溜まっていく。
今日は疲労回復ができそうなご飯を作ろうかな、なんてことを考えていると、コンコン、というノックオンが部屋に響いた。
「シーナか? 部屋で休んでたんじゃないのか? まだご飯じゃないぞー?」
「アケテ、イイ?」
「どうしたんだ? 別にいいけど……」
「オジャマ〜スル」
そう言って、シーナはドアを開けて部屋に入ってきた。
「おぉ、早速着てるんだな。似合ってる似合ってる」
今日買った地雷感漂う方の服を着ていたシーナ。【NEON】ではじっくり見れていなかったが、やはり抜群に似合っている。
銀髪の外国人らしい顔立ちだが、それが逆に互いを引き立てあっている。スタイルも、幼さと胸の残念さにさえ目を瞑れば抜群だ。脚は白くて健康的な範疇で細い。それに、何より顔がちっちゃい。身長はそれほどないのに、7〜8頭身くらいあるんじゃないか?
「アリガト。ソレを言われるためにココニキタ。それに、チャントここにキタのハジメテ」
「そうか。あれ、でもここに来たのって二回目じゃ……?」
「あれはノーカウント。オーケイ? ノーカウント。アレはワタシじゃない」
「な、なるほど……」
無茶苦茶な暴論に、俺は渋々溜飲を下げた。
「ジャア、気を取り直しテ、ここでファッションショーを開催シヨウト思いマス」
「……邪魔だなぁ(ボソッ)」
「ナニカ言った?? すごく嬉しいよね? だって、ワタシがファッションショーするんだよ? 嬉しすぎるデショ!?」
「ワー。ソーダネー。ウレシーネー」
「ムー。モウシラナイ。勝手にヤルモンネ」
不貞腐れた様子でぷくりと頬を膨らませたシーナ。
すこしだけ見てやる気にはなったが、素直に見てあげると言うのもなんだか違う気がした。シーナのキャラのせいだな多分。
俺は、ゲーミングチェアを半回転させながら、パソコンに向かい合う。
「満足したら教えてくれ。夕飯にするから」
「フゥーン、そっか」
なんだかいつもと反応が違うような。そんな気持ちがしなくもないが、まぁそういう時もあるだろう。
さっさとヘッドフォンを着けて作業に──スル、スルスルスル。
……ん?
なんの、音だ?
シュル、シュルシュル──パサ。
パチ、パチ、──パサ。
一体全体シーナは後ろで何をしているんだ?
すごく気になる。俺の全身が今すぐ振り返れと脳に伝達している。
だがしかし。流石にこれだけ一緒に過ごしてきたからわかることもある。
これは、やばいやつだ。
ただの勘だ。だが、振り向いてはいけないような、そんな気がする。
ヒュルヒュル──パサ。
「トール? こっち、ミテクレナイノ?」
妙に色気のある声だった。
その声につられてどうしても見てしまいたいと、そう思ってしまった。
俺は意を決して振り返る。
風邪で前髪が揺れ、好奇心が先走る。
そして──してやったり顔で笑うシーナが、目に入る。
その次に、視線を下へと持っていくと、フリルのついた純白のパンツとブラジャーのみを纏っていた。
幼い体つきだが、反応に困るレベルで微妙に育っており、幼女らしからぬ妖艶さがある。
俺はため息を吐きながら、顔をあげた。勝ち誇ったようなシーナの顔を見て、さらに重苦しいため息を吐きながら言う。
「シーナ。一つ聞いてもいいか?」
「ン? ナァーニ? もしかして、ワタシが魅了的すぎたカナ?」
「シーナは、小学三年生の男の子の水着姿を見て興奮するか?」
「え……? べ、別に、コウフン、しない、ケド……?」
「……そう言うことだ」
「ドウイウコ…………もしかして、ワタシが、小学三…………ッッ!!??」
俺は肯定の意味を込めて、静かに頷いた。
「ナッ、ナンでっ!? ヨクジョウしてよ!! ワタシを襲ってよ!?」
「なに言ってるんだよお前……自分の言ってることチャント理解してるか?」
「ムゥゥゥゥ……ニホンには、ロリコンしかいないって聞いたから、チョロいって聞いたノニ……だからココまでしたノニ……!!」
「それは偏見すぎないかぁ……? だけど、残念ながら俺は健康的でバインバインのお姉さんが好みなんだ。非常に残念ながら、ロリには興味ないんだよ」
「ナァッ……!? ネトゲのフレンドの【MASAO】も【OTAKU】も【TIーGYU】もミンナロリコンだったのにぃっ! 声はおじさんナノニ、アバターはミンナ幼女だったのにぃッッ!!!!」
「お、おぅ……そ、そうかぁ……」
この国の暗い部分を、まさかシーナから伝聞されるとは思わなかった。
それと、やっぱりシーナはニートだったんだな。
俺は将来ちゃんと働いて、ちゃんと税を納めようと、そう思った。
「とりあえず……服、着よう? な?」
「……納得イカナイ…………ソウダ! ……じゃなくて、ワカッタ。着替えるからアッチ向いてて」
「今『そうだ!』って言ってたよなぁ……」
だが、服を着てくれるのならもうなんでもいい。俺は椅子を半回転させて、パソコンに向き合う。少しも惑わされないように、ヘッドフォンをつけて待っていると。
そろりと視界の下端に現れた白い2本の何か。
それが何なのか、はっきりと捉えるより先に、その2本何かは、俺の股間を掴んだ。
シーナの腕だった。
「おっ、おい!! なにしてるんだっ!?」
「えっ……」
モニュっと俺の股間を一揉み。
俺が腕を引き剥がすよりも先に腕はするりと抜けていった。
俺は焦りを隠せず、がたつきながらも椅子を半回転させ立ち上がる。
そして、一つ怒鳴ってやろうと思ってシーナを見ると、なぜか顔を伏せながら体操座りをしていた。
「ワタシ、マジで魅力ナイ……マジで……ウゥ……」
「……もしかして、俺が勃ってるかどうかで判断したのか…………?」
「……ウン」
「そ、そうかぁ……な、何やってんだよ」
…………あっっっぶねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!
と言うのも実は、俺のとーるはしっかり元気だった。だが、元気すぎるが故に、いつもの定位置にいなかったのだ。
それが功を奏して、空席になった場所を突っ切って俺のお玉様を触ったのだろう。不幸中の幸いというやつだった。
それにしても、ロリコンではないにしろ、目の前にいるのは一応歳上だし。それに一度なにもつけていない状態を見てるから大丈夫だろうと油断したが。
俺としたことが、着るエロスがあることを完全に忘れていた。それ故に、完全に虚を突かれた。
それに、最近いつシーナが自分の部屋に入ってくるかがわからなくてご無沙汰になっていたのもでかい。
「ほら、シーナ元気出せよ。大丈夫。きっとシーナを魅力的だと思う人もきっとこの世にはいる…………はずだ!」
「なんでチョット間があったノ……ウゥ……」
相変わらず体操座りをしながら膝に顔を埋めるシーナ。シクシク泣いているふりをしているシーナの背中を刺すってやる。
だが、客観的に見たらなにがとは言わないがギンギンになった男が幼女を慰めるって、完全にアウトなんだよなぁ……。
なんてことを思いながら、しばらくの間シーナの背中をさすっていたのだった。
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