呪い回避のため(絶賛)嫌われ中のお姉ちゃんと交際したいのですが、お姉ちゃんは超SS級サディストであることが判明しまして……!?

藤樫 かすみ

呪いにかけられて交際開始!?

第1話 わたしの大好きなお姉ちゃん

 私、春夏冬あきなし 美孤みこには、好きな人がいる。


 いつも完璧で、かっこよくて、皆に優しくて、勉強も部活もなんでも出来て、ずっと私の憧れの人。


 でも、この恋は絶対に叶わない。


 だって、私の好きな人は……。





 私にとって朝は戦いだ。だってお姉ちゃんと話せる唯一のチャンスだから。なので今日も私は鏡の前に立って、自分の身なりをチェックしている。


「顔よし、髪よし、制服よし、笑顔よし!うん、今日も完璧」


 1つ1つ丁寧に確認して、自分にOKを出す。そうして「よし、今日こそは!」と鏡の前で息巻いた時だった。


美孤みこ~?朝ごはん~!」

 

 と、お母さんがリビングから私を呼ぶ声がした。私はすぐに「今行く!」と返事して、小走りでリビングへと向かった。



 リビングに入るとお父さんとお母さん、それからお姉ちゃんが朝ごはんを食べていた。私は急いで自分のダイニングチェアに座った。


(大丈夫、私なら。今日こそお姉ちゃんに……!)


 私のダイニングチェアはお姉ちゃんの目の前だ。私はいつものように落ち着いて息を吸い、勢いよく声を出した。


「お、おはよう!お姉ちゃん!」


 私の声がリビングに響く。お父さんは「美孤は朝から元気がいいなぁ」と笑い、お母さんは「早く食べちゃいなさい」と私をせかす。でもお姉ちゃんは、


「……」


 私の方も見ないで、お箸をお茶碗に置くと「ごちそうさま」とだけ言って、椅子から立ち上がった。


「あ、あの、お姉ちゃ、」


 私の声を無視して、お姉ちゃんはリビングを出て行く。


 その反応に私の肩はがっくり、と落ちた。


(今日もおはようが聞けなかった。これで0勝72敗……)


 肩を落としている私に、お父さんが「あ、ほら。美都みとも朝練で忙しいから……」なんて易いフォローをしてくれるが、私には何の慰めにもならなかった。


「うう、今日も惨敗……」


 今日も負けてしまったことに落ち込んで朝ごはんに手を付けられずにいると、お母さんが「美孤、ほら、早く食べないと間に合わないわよ」と、私にお茶碗を渡してきた。私は「はぁい……」と暗い声で返事して、受け取ったご飯をかきこんだ。


(ううん。まだ落ち込むのは早いわ、美孤。まだ学校と言うチャンスがある……!)


 私は落ち込む自分を励まして、目玉焼きをぱくりと一口で食べた。またお父さんが「美孤、言い食べっぷりだな!」と笑う。そんなお父さんに「恥ずかしいからやめてよ」と反論した時だった。


 玄関から「行ってきます」と言うお姉ちゃんの声が聞こえた。お母さんが「はぁい、いってらっしゃい!」と見送りだしている。


「ええ、嘘、もうっ!?」


 私はすぐに残りのご飯をかきこんで、椅子から立ち、そこに置いておいた鞄を持った。お父さんがまた「なんだ美孤、ゆっくり食べなさいよ」と言うが、それを無視して玄関へと向かう。そこにはもうお姉ちゃんの姿はなかった。


「お姉ちゃん早すぎっ、!」


 なんて文句を言いながら急いで靴を履いていると、お母さんがお弁当を持ってきた。


「はい、美孤。今日のお弁当!気を付けるのよ」


「うん、ありがとお母さん!」


 私はそう言ってお弁当を受け取り鞄の中に仕舞うと、急いで玄関の扉を開けた。


「じゃあ行ってきます!お父さん、お母さん!」


「「いってらっしゃい~」」


 私はお父さんとお母さんの声を遠くで聞きながら、お姉ちゃんの背中を追って走り出していた。









 

 春夏冬あきなし 美都みと。18歳の高校3年生で、皆の憧れの先輩。女の子なのに、とっても勇ましくてかっこいい。文武両道で、勉強も運動もとても優秀。バスケ部のエースで、試合の時のかっこよさは男子も顔負けのレベル。しかもみんなにすごく優しくて、困っている子がいたら関係なく助けてくれる素敵な性格。学校内には特に女の子のファンが多くて、皆、春夏冬あきなし先輩ってしたってる。


 そんな春夏冬あきなし先輩は、実は私のいっこ上のお姉ちゃん。私はお姉ちゃんを昔からずっと慕ってて、ずっと憧れてた。昔はずっと一緒に遊んでくれて、寝る時も一緒だった。私には特に甘くて、いつも優しくしてくれてた。私はそんなお姉ちゃんが大好きで、ずっと仲良しでいたかった。なのに……、なのに……。



 私が中学1年生、お姉ちゃんが中学3年生の時に事件は起こった。


『私も友達とか彼氏とかいるしさ、ちょっと離れよう』


『……え?』


 突然の言葉に私は固まった。お姉ちゃんにはその時彼氏がいないのなんてリサーチ済みだったし。お姉ちゃんのお友達だって、皆私のこと可愛がってくれてたし、なんで離れなきゃいけないのか、私にはわからなかった。


『どうして……?お姉ちゃん。私、何かしちゃった?嫌なところがあるなら言って?私、治すから……』


 そう言った時、お姉ちゃんは今まで見たこともないような冷たい視線で私を見た。


『……姉妹でも距離感があるだろ。大体中学生にもなってべたべたするなよ』


 お姉ちゃんはそう言い残すと、私の前から立ち去った。


 お姉ちゃんはそれから本当に変わってしまった。私にもう話しかけなくなったし、私が色々しても無視するようになった。しかもそれは家だけで、学校ではみんなに気が付かれない程度に私を避けていた。私はそれでも負けずにお姉ちゃんを追いかけたけれど、お姉ちゃんは私にどんどん関心がなくなっていった。


 でも、私はどんなにお姉ちゃんに無視されても、諦めきれなかった。


 だって私は、お姉ちゃんのことが好きだから。

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