第170話 ピンクフリードの入手と白いローブの教団員

ラッキーは一人倉庫の見張りをしていた。シルフィードとマリア、リルは宿で待機だ。リルはラッキーと一緒に行くとごねていたがオーク肉を上げると尻尾を振って待機に応じていた。


ラッキー一人なら危なくなっても転移で逃げる事ができるし、作戦会議で有ったように教団員に触れてさえいれば、一人を一緒に転移で別の場所に移動させる事もできるからだ。


(さて問題は運よくピンクフリードを持ってるかだな。倉庫から誰も出ない日はなかったから接触はできるだろう。ピンクフリードを持ってなければ尋問する必要があるけど、そういうのってやった事ないからうまく行くかわからない。いっそ気絶させたらランドルトさんの所に連れて行ってもいいか。)


ラッキーが入口が見える所で、しばらく様子を伺っていると、倉庫の入り口から白いローブを着た人が一人で出てきた。


(おっ出てきた。じゃあ俺も行動開始だ。今日はどこに行くんだ?)


ラッキーは今日まで、シルフィードと交代でこの倉庫を見張っていた。その時に出てくる教団員の後をつけたが普通に買い物をして戻ってくるばかりだった。買い物して戻ってくる場合は、帰り道の途中で気絶させて宿へ連れて行こうと思っていた。


白いローブの人は、ブツブツいいながら歩いている。


(何か言ってるな。近づいても大丈夫か?人の何人か歩いているし怪しまれない程度に近づいてみるか。)


ラッキーは、人の流れに紛れて白いローブの人に近づいた。すると、その人がブツブツ話している内容が聞こえてきた。

「今日は誰にこの薬を使おうか?若い学生がいいか?いや強そうな男にあげるの面白いな。キレイな女に使うのもいいか。」


(コイツ!?まちがいない。今日はアタリだ。きっとこの男はピンクフリードを持ってる。なら人が増える前に一緒に転移した方がいいな。このまま放置すると、又新たな犠牲者が出る。)


白いローブの男が魔法が使えなくなる薬、ピンクフリードを持っている事を確信したラッキーは、その男から距離をとり、転移魔法を発動するタイミングを探した。そしてそのタイミングはすぐに訪れた。どういう訳から白いローブの男とラッキー以外の人がいつの間にかいなくなっていたのだ。ここしかないとラッキーは行動を開始した。


ラッキーは素早く、白いローブの男に近づき背後に回って一撃で男を気絶させた。そしてそのまま、シルフィード達がいる宿へと転移した。転移した先ではシルフィード達が予定通り待っており、すぐに気絶させた男を縛りあげた。


「ラッキー。あったわ。ピンクフリードよ。やったわね。」


「ああ。これを持ってランドルトさんの所にいけば治療薬が作れるかもしれない。治療薬ができれば魔法が使えなくなるこのピンクフリードなんか怖くないぞ。」


「やりましたね。ラッキー様。それで・・・この人はどうしましょうか?」


「そうだな・・・」


(ピンクフリードを手に入れたから実際、この男のこのまま縛って放置しても問題はない。倉庫に戻られると他の仲間に伝えられるからどこかに捕まえておく必要はある。やっぱりランドルトさんの所に連れて行くのがいいか。学園なら学園長もいる。一緒に尋問すればグレイ教団の事がさらにわかるかもしれないな。」


「ランドルトさんの所に一緒に連れて行こう。学園なら学園長もいるし、最悪学園長に預ければなんとかなるだろ。今なら気絶したままだし学園内へは転移でいけるし。」


「そうね。ここにずっと置いておくわけにはいかないものね。」


ピンクフリードと、グレイ教団員を捕まえたラッキー達はそのまま、学園へと転移して、食堂へと向かった。食堂内は学生達が食事をしている最中だったが、ラッキー達はかまわず奥へと進み、ランドルトさんを探した。


「ランドルトさん!よかった。すぐに見つかって。言ってたピンクフリードを手に入れたんですが、教団員も一緒に捕まえたんです。よかったら見てもらえませんか?」


「本当かい!?わかった。でもちょっと待ってくれ。今丁度食事を作るので手一杯なんだ。学園長にはすでに話をしているから学園長室で待っててもらえないか。落ち着いたらすぐにでも向かうから。」


(まあ昼時だからしょうがないか。てか俺もお腹すいたな。外でシルフィー達が待ってるから俺だけお昼を食べる訳にはいかないし、学園長にこの男を預けたら俺達もお昼を取ろうか。)


その後、ラッキー達は学園長室へと向かった。学園長にはすぐに会えたので状況を伝え、白いローブの男を学園長に預けた。ランドルトさんが来るのは食堂が落ち着いてからになると思い、ラッキー達は先にお昼ご飯をすます事にした。もちろん何かあって割れたら困るので、ピンクフリードも学園長に預けてきた。


食堂でいつものパンを食べて、食堂の学生達も少なくなってきたので、ランドルトに声を掛け、一緒に再度学園長室に向かった。学園長室には縄に縛られて床に転がってるグレイ教団員と、机で仕事をしている学園長の姿があった。


「お待たせしてすいません。ようやく手が空きました。早速ですが、ピンクフリードを見せてもらっていいですか?」


「ああかまわないよ。それにしてもランドルトが元グレイ教団員だったとはね。過去を聞かずに採用した私も私だけど、こんな事ならはじめっからランドルトに相談しておけばよかったね。」


「ははは。まあ相談されても僕では何もできなかったかもしれませんけどね。ラッキーさんがピンクフリードを持ってきたおかげで、希望はありますが期待しないでください。僕でもわからない事は多いので。」


そうして、学園長室に集まったメンバーは、グレイ教団員が目を覚ますまで、ピンクフリードを調べる事にするのだった。



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