第109話 サラマンダ連合国へ

サラマンダ連合国へ行くまでの1カ月は充実した日を過ごしていた。


まず一番が宿をとる必要がなかった点だ。ラッキーは元々公爵家の嫡男だ。追放されたとは言え、しっかりと王国武道会で結果を残し、公爵家へと復帰していた。一日の始まりは公爵家全員とシルフィードとマリア、リルの食事から始まる。宿代も食事代も一切かからない生活だ。とても充実していた。


食事が終わると行動パターンは2通りになる。クッキーやスイートと買い物に行くか、シルフィード、マリア、リルと冒険者活動をするかだ。ラッキーの体調が完全に元に戻るまではクッキーとスイートがかなり心配していたので、頻繁に買い物に出かけていた。


体調が元に戻ってからは、冒険者活動を再開した。


リルがオークをねだるのでオークを狩りに行き、

ゴブリンが集落を作って困ってると言われれば集落を殲滅に行き、

リルがオークをねだるのでオークを狩りに行き、

魔物に襲われてる冒険者を助けたり、

リルがオークをねだるのでオークを狩りに行きとCランクの冒険者として精力的に依頼をこなした。


ギルドの依頼をこなす事を目的に活動していたので、モンスターガチャスキルはそれほど貯まらずこの1カ月、使っても素材は出なかった。もちろんデイリーガチャスキルからも素質は出なかった。


ちなみにデイリーガチャスキルは朝ご飯の時に使うようになった。素質が出る事なく、毎日毎日パンが出る事に、ラッキーは日に日に申し訳ない気持ちになっていったが、スイートを始め家族達はラッキーがスキルを使ってパンを出すとおいしそうに食べていた。


それは、ラッキーにとって癒しの時間となっていた。レベルが上がった訳でもなく、素質が増えた訳でもなかったが、この1カ月の冒険者活動はラッキーはとても楽しんでいた。もちろん良い事もあった。


転移魔法の移動距離が伸びたのだ。この1カ月転移魔法の練習はサボらず行った。さすがに町から町への移動とまではいかないが、距離は1キロ先までなら転移できるようになった。王国武道会の時は100m先までしか移動できなかったが、この1カ月間で距離は10倍に伸びていた。


ラッキーは、何かあった時にすぐに戻ってこれるように、サラマンダ連合国に行くまでに町から町への転移魔法ができるようになりたかったが、実際はそれほど都合よくはいかなかった。



そして・・・


「ようやくキャロラインに着いたわね。」


「ああ。1週間は長旅だったな。陛下の護衛とか正直気を張り続けないといけないから疲れたよ。」


「でもさすが王族の護衛ですね。」


「ああ。俺達は本当にただついてきただけみたいな感じだったもんな。」


「まあそれもそうでしょ。王族の護衛なんだから。私達のようなCランクだけじゃ危ないわ。現に盗賊にも襲われたし。」


「そうだな。あれはやばかったな。」


「と言っても私達は何もしてませんけどね。」


ラッキー達は国境を越えて、無事にサラマンダ連合国へたどり着いた。そして、四国会議が行われるキャロラインの町に。今回サラマンダ連合国へ向かうメンバーは豪華の一言だった。


王族からは国王、第一王女の2人。貴族からは外務相とストライク公爵。そして王族の使用人に王族専用の騎士、に貴族の使用人だ。その護衛にBランク冒険者が3パーティとラッキー含めたCランク冒険者が2パーティだ。


王族や貴族、使用人達は馬車に乗って移動するので、馬車は合計5台もあった。Bランクの冒険者が前と後ろと真ん中を護衛し、Cランク冒険者がその間を護衛する形だ。王族が乗る馬車なので、馬車もとても豪華だった。遠目から見ても偉い人が乗っているというのがわかる仕様だ。


道中は盗賊が一度襲ってきたのと、魔物が何度が襲ってきた。だが、ラッキー達Cランク冒険者の役割は王族と貴族を守る事。盗賊と魔物はBランクの冒険者達と騎士達が一瞬で倒していた。なのでラッキー達は何もせずただただ、馬車と一緒に歩いているだけでサラマンダ連合国へと辿り着いていた。


まあ、第一王女のプリンとは、ラッキー、シルフィード、マリアともに顔見知りなので、何度か馬車に同席して話をする事もあったが・・・


「ラッキー?町についたらどうするの?」


「とりあえず、陛下と王女、外務相と父上とは同じ宿に泊まる事になると思う。護衛という形だけど俺達も四国会議には参加しないといけないからな。」


「なんか急に緊張してきたわ。他国からも王族とか来るのよね?は~。私うまくしゃべるかしら?」


「シルフィーでも緊張とかするんだね?」


「そりゃもちろんするわよ。マリアは大丈夫なの?」


「えっ・・・まあ私も緊張していますよ。でも・・・ラッキー様が一緒ですから。」


「うらやましいわね。私もそういう風に考えられたらいいんだけど・・・」


「そこまで他国の王族と話す事はないだろ。陛下が俺達を紹介して後は他国の俺達みたいな素質持ちと話すぐらいだろ?」


「それはそうだけど・・・」


シルフィーの心配をよそに、ラッキー達はキャロラインの町の宿へと入って行った。長旅だったので、その日はゆっくり休む事にしたのだった。





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