第108話 国王からの願い
「お願い?ですか・・・」
「ああ。隣国のサラマンダ連合国で行われる四国会議に同行してほしいのだ。」
「四国会議に・・・俺がですか?」
国王とともにロートが話始めた。
「ここからは儂が説明しよう。四国同盟は知ってるな?」
「うん。俺達がいるアルカディア国、サラマンダ連合国、ガイア王国、フランダル魔法国の四つだよね?」
「そうだ。四国同盟は大国ロシアン帝国に対抗する為に作られたモノで、同盟を結んでからは帝国の侵略をうまく食い止めている。だが、帝国の連中がいつまた侵略してくるかわからん。その為の四国会議なんだが今年は勇者がいるサラマンダ連合国で、会議が行われる事が決まっていて、剣聖と聖女を連れて行く予定だったのだ。」
「剣聖と聖女・・・それって。」
「ああ。メルトとマリアだ。各国から期待の若者を連れていき、戦略の共有と、横の連携を強化するのが目的だ。」
(なるほど。俺はメルトの代わりって訳か。だけどどうしてメルトとマリアが?シルフィーの素質だって激レアなはずだ。それに期待の若者だったらメルト以外にも優秀な人がいそうだけど・・・)
「なるほど。俺がメルトの代わりって訳ですね。でもどうして俺が?」
「四国同盟と言っても、やはり自分の国が一番大事だ。みな、自国に優秀な人物を取り込もうと考えている。」
(なるほど。メルトとマリアは婚約者の関係だった。それなら他国に流れる可能性は低い。それに二人共貴族だ。変な絡まれ方もされる可能性が低い。そう言った理由から選ばれたのかもな。)
ラッキーはロートの話から、今回の事を推測した。
(なら俺が代わりに選ばれるのも頷けるな。)
「なるほど。俺とマリアなら婚約者同士で貴族。容易に取り込む事ができないって事だね。」
「そういう事だ。それに今回連合国で行われるっていうのもあってな。あそこには勇者がいる。勇者がいる国に居たいと思うものはきっと多いだろう。我々がいくら止めても本人が移動したいなら止める事はできん。」
(勇者か・・・。たしか激レアランクの素質の中でも最上級の素質だ。サラマンダ連合国にいるのか。どんな人なのか興味はあるな。さてどうするか・・・。このまま公爵家として貴族として生きていくか。冒険者として生きていくか・・・悩む所だな。)
「そうですね。他の国にも、勇者にも興味はありますので、同行する事は問題ありません。ですが、貴族としてではなく、冒険者として参加したいと思っています。なので、依頼という形にはできませんか?」
「ラッキー・・・」
「父上。俺にとって公爵家は大事だけど、冒険者になって、いろんな所に行って、いろんな人と出会う。そんな自由な感じが俺には合ってるとつくづく思ったんだ。家は正直スイートがいるし、父上もまだまだ若い。それに、シルフィーとも約束したんだ。冒険者として世界を周ろうって。だから。」
「ふっ・・・ラッキーならそう言うんじゃないかと思っていたよ。」
「父上・・・」
「安心しろ。それに、元々、ラッキー、マリア、シルフィード嬢に今回の事はお願いするつもりだった。まあ家の事は儂にまかせておけ。だがスイートには自分から言えよ。儂は・・・嫌われたくないからな。」
「ははは。」
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そうして、国王達との話を終えラッキーとロートは自宅へと戻って行った。そして帰りの道中、
「ラッキーすまない。面倒事に巻き込んでしまって。」
「面倒事って。ただ、国王陛下とともに隣国に行くだけでしょ?旅行気分で行ってくるよ。」
「・・・そうだな。たしかにラッキーの言う通りだな。無事に帰って来いよ。」
「もちろんだよ。俺の家はストライク家だからね。会議が終わったら帰ってくるよ。」
「ああ。出発までは時間もある。それまでは家にいるんだろ?クッキーもスイートもお前と一緒に過ごしたがっている。」
「うん。そうだね。しばらくは家にいると思うよ。王都のギルドで依頼も受けてみたいし、だけど・・・今後はまだわからないかな。」
(母上やスイートには悪いけど、正直冒険者として世界を周って見たいな。隣国だけじゃなくて他の国も・・・。それに俺の場合、転移魔法が育って行けばここに戻ってくるのもすぐだ。そうなれば家を拠点にしながら活動もできる。課題は多いけどその分やりがいはあるな。)
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そうして、ストライク家に戻ってきたラッキーとロートは王城での事を早速全員に話した。みんな驚いていたが、マリアもシルフィードも隣国に行く事に関しては問題ないと言ってくれた。リルももちろんOKだった。
スイートとクッキーは、折角戻ってきたのに、すぐにいなくなるなんて早すぎる。と言っていたが何もいなくなるわけではない。1カ月程、隣国へ旅行に行く程度だ。もちろんその後の事はわからないが・・・。ラッキーは言える雰囲気ではなかったので、その後の事はまだ言わない事にした。
隣国サラマンダ連合国に出発するのは1カ月後だ。そこから移動に1週間。会議が10日、そして戻ってくるのに又1週間かかる。出発までは、今までなかなかできなかった家族の時間を確保しつつ、王国武道会での力不足を実感し、冒険者としてもっともっと成長しなければと、決意するラッキーであった。
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