第102話 王国武道会二回戦の相手は・・・

「ライアン教官。今日はよろしくお願いします。」


「うむ。全力で来い!儂も全力を出そう。」


ラッキーは武道会の選手控え室で、ライアン教官に話しかけた。あと1時間後、王国武道会の2回戦がはじまる。


ライアン教官は開会式で3を引いていたので、2を引きメルトに勝利したラッキーは2回戦でライアン教官との試合になる。


軽く挨拶をして、ラッキーは専用控え室に入った。


(ふー。2回戦でライアン教官とか・・・。まあ一番の目標は達成したからもう無理する必要はないんだけど。)


ラッキーがこの大会に参加したのは、マリアとメルトの婚約を解消させる為だった。その件については昨日、ストライク公爵が動き二人の婚約は解消されていた。


(だけど・・・どうせやるんなら勝ち続けたいよな。ライアン教官とは模擬戦をした時に転移魔法は見せている。あの時は身体強化を使ってなかったから、それも使えば勝てる可能性はある。)


持ってる力を全て出す事を決めたラッキーは両手で頬をパンパンと叩き気合いを入れた。


丁度開始の時間となり、係の人が呼びに来た。


「よし!」


「皆さんお待たせしました。それでは只今から王国武道会2回戦を開始致します。まずはこちら、1回戦で剣聖を倒した新鋭、ラッキー・ストライクーーー。得意技はミスリルを使った剣と、転移魔法です。」


ラッキーが公爵家の人間である事を示すストライクの家名と、転移魔法の名前が出た事で、会場は大きくざわついた。


「おいおい。今ストライクって言わなかったか?」

「言ってたわ。それに転移魔法って・・・。」

「転移魔法が使えるのか?」

「剣聖もストライクって言ってなかった?」


観客席と同様に闘技場の隅には入場前のラッキーとライアン教官が並んで話をしていた。


「まさかストライク公爵家の者だったとは。それにあれはやはり転移魔法だったか。」


「はい。」


「剣術の素質だけだったと思っていたが?」


「色々ありまして。」


「そうか。」


ラッキーがストライク家の者である事と、転移魔法が使える事は、昨日の内にストライク公爵が武道会の運営に話をしていた。


後からバレるよりも先に言っといた方が印象が格段に良いらしいからだ。転移魔法を使える人はめったにいないのでかなり希少だ。公爵の名を持つ者と伝える事で他の貴族からのトラブルを未然に防ぐ意味あいもあった。


「続きまして冒険者ギルドより、剣聖に一番近い男と言われたライアンーーー。年をとっても剣術の腕は錆びついていません。むしろより洗礼されています。」


選手の紹介がされて、ラッキーとライアン教官は闘技場の中央に移動し、剣を構えて対峙する。


(身体強化全開でいけば、使える転移魔法の回数は5回。身体強化は1時間しか持たない。その間にライアン教官を倒さないと。)


「それでは、試合開始!」


試合開始とともにラッキーは動いた。剣を握ってライアン教官に向かって行く。


(まずは身体強化がどれぐらいライアン教官に通用するか確かめる。)


模擬戦ではラッキーが剣を振っても、ライアン教官は全ての攻撃を防いでいた。回避したり、受け流したり、単純に剣で防いだり。


だが、身体強化を使った事でラッキーの能力は1時的にあがっている。


ラッキーの振り下ろした剣は、ライアン教官に防がれた。全力で振り下ろした力に耐えきれなかったのか、ライアン教官はラッキーの剣を防ぐと、そのまま受け流し反撃する。


ライアン教官の剣は力はないが、巧みに剣をふってくる。


(やっぱり強いな。剣術だけじゃ勝てない。か・・・。)


ラッキーは至近距離は不利と思い距離を取った。得意のスピードを活かしたヒット&アウェイ作戦に切り替えた。


ライアン教官の左右、背後に移動してはライアンに攻撃を仕掛ける。ライアン教官はあまり動かず、ラッキーの攻撃を防いでいく。


はじめは、追いついていた防御も、スピードを上げるラッキーに対応が追いつかなくなっていった。


(このまま押し切る。)


ライアン教官はたまらずラッキーから距離をとる。そして、


「剣技。疾風斬り!」


ライアン教官の剣からスラッシュのような横薙の斬撃が飛んで来た。


「やばっ!?」


ラッキーはすかさず、ジャンプして攻撃を交わす。


ライアン教官は上空に飛んだらラッキーに連続で剣技を放った。


「剣技。スラッシュ!」


(やばい!転移。)


ラッキーは転移魔法を使ってスラッシュを躱した。


「さすがだなラッキー。俺の疾風斬り、スラッシュの攻撃をあんな形で躱すとは。」


「やっぱりライアン教官も剣技が使えたんですね。」


「仮にも剣聖に一番近いと言われていたからな。だが素質を持たない儂が使える剣技はこの二つだけだ。」


「本当ですか?」


「ふっ。どうかな・・・」


その後、距離を取るとライアン教官から剣技が放たれ、ラッキーが転移魔法を使って、躱すと同時にライアンの背後から攻撃を仕掛けたりと観客大盛り上がりの中、二人の試合は続いて行く。


(くそっ!転移魔法は後1回しか使えない。このままじゃ・・・来る!転移!)


ラッキーはライアンからの攻撃を感じ最後の転移を使った。


だが・・・


ライアンは剣技を発動しておらず、更に転移した場所も読まれていて、ラッキーのクビに剣があてられた。


「ここまでだな。」


ラッキーは剣を離し降参した。


ラッキー対ライアン教官の試合はラッキーの敗北で幕を閉じたのだった。


☆☆☆☆☆


いつも読んでいただきありがとうございます。


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